立ち向かう振りの妄想癖

読んだ本の感想を雑に放ります(ミステリ多め)。超不定期更新です。

『滅びの前のシャングリラ』 凪良ゆう

内容(amazonより引用)

「明日死ねたら楽なのにとずっと夢見ていた。
なのに最期の最期になって、もう少し生きてみてもよかったと思っている」

「一ヶ月後、小惑星が衝突し、地球は滅びる」。学校でいじめを受ける友樹、人を殺したヤクザの信士、恋人から逃げ出した静香。そして――荒廃していく世界の中で、人生をうまく生きられなかった人びとは、最期の時までをどう過ごすのか。滅びゆく運命の中で、幸せについて問う傑作。

 

 

感想(ネタバレなし)

繊細なタッチで現代の価値観を鋭く刺す作家というのが、今までの凪良ゆうに抱く印象だった。
しかし本作は毛色が異なり、暴力とユーモアでガンガン進んで行く作風で面食らった。

人類が滅ぶことが決定している世界を描く小説、と聞いて浮かぶ伊坂の某作が小康状態にあったのに対し、本作はパニック真っ只中。
略奪は当然、死体が道に転がっているのも当たり前。
そんな地獄のような舞台で描かれるのが、愛や幸せというのが良い。
普通の世界では悲惨な日常を送ってきた人々が、この世の破滅の前に楽園を見つける。この形でしか成し得なかった幸福が胸を打つ。

そしてラストは、それまでの話とは違ったアプローチになるのだが、展開が最高すぎる。
こんな熱い物語、大好き以外ないぜ。
正直風呂敷を畳み切れていない部分も少なくないが、んなもんどうでも良くなるくらいの熱量に押し切られた。

善悪の矛盾、人の弱さと醜さを真っ向から捉えた上で歌われる、高らかな人間讃歌が魂を揺さぶる。
最後の一行にもめちゃ痺れて、当分余韻が抜けなそうだ。

 

評価:9点

2024/2/2 読了