当ブログの感想の目次です。
作家別に五十音順で並んでおります。
付けている点数は、個人的な10点満点中の評価です。
あくまで主観的な基準によるものであり、専門家でも識者でも何でもない一個人の好みによる採点なので、軽い気持ちでご覧いただけると幸いです。
当ブログは本、主に小説の感想を上げていくことを趣旨としています。
元々は自分のためにノートに感想を書いていて、それをwebにも上げてみたく思い、開設に至りました。
その為、誰かに紹介するようなスタンスではなく、ただ淡々と思ったことや良かった点について書き連ねる形のものが多いと思います。
また、僕は読書歴の浅い人間ですので、あまり造詣は深くない事をご了承ください。
本ブログでは、ネタバレなしの感想を先に載せて、その少し下にネタバレありの感想を載せるという形式をとっています。
これは、元々ネタバレを含んだ感想からネタバレ箇所を削って、ネタバレなしの感想としています。
本当は別個に書くべきなのでしょうが、何分めんどくさがりなものでして。
ネタバレの基準としては、話の真相に関わる内容......でしょうか?
ミステリで言えば犯人、トリック、動機ですね。その具体的な内容をまだ読んでいない人に喋るのは、一ミステリ読みとして絶対に避けたいです。
ただ、「展開に驚いた」とか「伏線の張り方が巧い」などの、真相に対する具体性のない感想は語ります。
なので、そういった要素の有無すら知りたくない方は読まれない方が良いかと。
あと、真相や意外な展開ではない場面については普通に語ります。
でないと作品の良さを語るのは非常に難しいので。
具体的にどんなシーンがあるのかすら知らず、先入観も何もない状態で作品を楽しみたいと考える方にも、あまり勧められないかもしれません。
ご了承のほどを何卒宜しくお願い致します。
続きを読む内容(amazonより引用)
母の死後、母の初恋の人、佐山に引きとられた雪子は佐山を秘かに慕いながら若杉のもとへ嫁いでゆく――。雪子の実らない恋を潔く描く『母の初恋』。
さいころを振る浅草の踊り子の姿を下町の抒情に托して写した『夜のさいころ』。
他に『女の夢』『燕の童女』『ほくろの手紙』『夫唱婦和』など、著者が人生に対し限りない愛情をもって筆をとった名編9編を収録する。
感想(ネタバレなし)
著者の作家人生の後期に上梓された作品だからか、『雪国』に見られるような自然の美を切り取る描写はやや少ない。
代わりに、人の親となった人物が多く、諦めに似通う優しさが随所に見られた。
「母の初恋」は、初恋の相手が遺した娘を、嫁ぎ先に送り出すシーンから始まる一篇。
愛し合っていたにも関わらず別れてしまった二人の数奇な運命が、子である雪子にも重なり、切ない。
終わりの五行が鮮烈で、文豪の凄味を感じずにはいられなかった。
「ほくろの手紙」も好きだ。
首筋にある黒子をいじってしまう変な癖を持つ妻と、それを咎める夫。
構図だけだとコメディチックなのだが、それが夫婦の愛憎を巧みに写し取っているから恐れ入る。
「燕の童女」は珍しく(?)徹頭徹尾平和な一篇。
新婚夫婦の寄る辺なくぎこちない空気が、たまたま同じ舟に乗り合わせた少女のくもりないあどけなさに、ゆるんでいく。
その変化が心地いい。
川端の作品は、冷たい観察が基底にあるが、時たまあたたかくて、そこに魅かれる。
評価:なし(文学作品のため)
2024/9/25
内容(amazonより引用)
1977年、エストニアに生まれたラウリ・クースク。
コンピュータ・プログラミングの稀有な才能があった彼は、ソ連のサイバネティクス研究所で活躍することを目指す。だがソ連は崩壊し……。
歴史に翻弄された一人の人物を描き出す、かけがえのない物語。
感想(ネタバレなし)
ソ連崩壊の前から現代に至るまでの時代の流れと、プログラミングに魅入られた一人の半生を丹念に描いた一冊。
プログラミングと聞くと、無機質で人の気持ちが反映しづらく、近寄りがたい印象を受けるかもしれない。
しかし、本作の主人公であるラウリがプログラム上に見出す世界は、詩的で美しいのだ。
静かに画面と向き合い、プログラムを組む。
その澄んだ心象風景に、森博嗣の『喜嶋先生の静かな世界』を思い出した。
志を共にする仲間と出会ってから、彼の世界は一層輝きを増す。
永遠に留めておきたくなる綺麗な瞬間は、しかしながら儚く短い。
心から通じ合っていたはずなのに、ソ連崩壊の動乱により、各々のバックグラウンドの違いが浮き彫りとなり、散り散りになってしまう展開は胸が痛かった。
だが、その後も時は流れ、現在に追いつき、そしてラウリ・クースクは見つかる。
歴史に名は残らずとも、彼の人生はかけがえのないものであり、データとして残すべきだ。
そう、読者にも思わせる豊かな物語が確かに、そこにあった。
とても良い小説を読んだと思う。
評価:8点
2024/9/22 読了
内容(amazonより引用)
ぼくは思わず苦笑する。去年の夏休みに別れたというのに、何だかまた、小佐内さんと向き合っているような気がする。ぼくと小佐内さんの間にあるのが、極上の甘いものをのせた皿か、連続放火事件かという違いはあるけれど……ほんの少しずつ、しかし確実にエスカレートしてゆく連続放火事件に対し、ついに小鳩君は本格的に推理を巡らし始める。小鳩君と小佐内さんの再会はいつ? 解説=辻真先
感想(ネタバレなし)
※以下はネタバレ箇所を隠した感想です※
夏の一件でとんでもないカタストロフに至り、さてどうなるかと手に取った秋。
始まりからシリーズ読者の度肝を抜く展開で、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしてしまったが、蓋を開けてみればいつも通りの二人で安心する。
てか、今まで小山内さんの異常さが目立っていたけど、小鳩君も十二分にイカレてるよな。
あの行動なんかサイコパスの域だよ!
でもって今回は新キャラである瓜野君の視点が交わるのだが、まぁ彼がイタいのなんの。
高校の新聞部なんて極小規模なコミュニティで何か大きなことを成し遂げたいと息巻いて、少しの成功でイキりちらし、有頂天になってしまう瓜野君。
まぁいい目には遭わないだろうと思ったが.......。
なんやかんやあったが、夏の終わりとは打って変わる、栗やさつまいものような、ほのかに甘い終わりで良かった。
割れ鍋に綴じ蓋である。
評価:7点
2024/9/21 読了
以下、ネタバレ箇所を含めた感想
続きを読む内容(amazonより引用)
舞台は大阪のテレビ局。腫れ物扱いの独身女性アナ、ぬるく絶望している非正規AD……。一見華やかな世界の裏側で、それぞれの世代にそれぞれの悩みがある。つらかったら頑張らなくてもいい。でも、つらくったって頑張ってみてもいい。人生は、自分のものなのだから。ままならない日々を優しく包み込み、前を向く勇気をくれる連作短編集。
感想(ネタバレなし)
『スモールワールズ』が人気を博し、今年は別の作品で直木賞を受賞した一穂ミチ。
この方は何より、一言で語れない複雑な心象を写し出すことに長けている。
性別や立場の壁を越えて、各自の視点から等身大の悩みをここまでのリアルさを持って描ける作家には、中々お目にかかれないだろう。
本作の舞台はテレビ局だ。
ネットが爆発的に普及し、情報媒体としての役目を奪われかけているうえ、SNS上で槍玉に上げられるところを日常的に目にするテレビに、悪感情を抱く人も少なくないと思う。
事実この作品においても、斜陽産業の諦観じみた空気が常に漂っている。
ただ、それで終わらない。
「泥舟のモラトリアム」では、いわゆる中年の危機を迎えた主人公の目から、報道の責務と信念を明かしてくれる。
「資料室の幽霊」も、年が離れた二人の女性を通じて、”新たに始まること”と”これからも続くこと”に気づかせてくれる。
そして「眠れぬ夜のあなた」は、人が人を知る過程を丁寧に積み上げ、その尊さが込み上げるようなラストシーンを見せてくれる。
草臥れた日常に、「でも」「まだ」という希望を見つける魔法が、一穂ミチの小説にはかかっているのだ。
評価:7点
2024/9/18 読了
補足:ちな、サイン本です😁
内容(amazonより引用)
9人のうち、死んでもいいのは、ーー死ぬべきなのは誰か?
大学時代の友達と従兄と一緒に山奥の地下建築を訪れた柊一は、偶然出会った三人家族とともに地下建築の中で夜を越すことになった。
翌日の明け方、地震が発生し、扉が岩でふさがれた。さらに地盤に異変が起き、水が流入しはじめた。いずれ地下建築は水没する。
そんな矢先に殺人が起こった。
だれか一人を犠牲にすれば脱出できる。生贄には、その犯人がなるべきだ。ーー犯人以外の全員が、そう思った。タイムリミットまでおよそ1週間。それまでに、僕らは殺人犯を見つけなければならない。
感想(ネタバレなし)
※以下はネタバレ箇所を隠した感想です※
個人的にはオールタイムベスト級である『いけにえ』と2023年の各賞でしのぎを削り、その噂もアンテナを張るまでもなく耳に入っていた本作。
意を決して読んでみれば……なるほど、これはミステリ史に名を残すのも、巷で話題になるのも納得の傑作だ。
プロットとしては極めて王道のクローズド・サークルもの。
閉鎖空間で起こる殺人事件の犯人を突き止めると書けば、世にいくらでもあるミステリだろう。
特異なのは、あらすじにあるような状況のみであり、その一点がもたらす威力が凄まじい。
明かされた真実に、呆然としてしまった。
とにかくその手口が鮮やかすぎて、よく煽られる”トラウマ!”というよりは、むしろ感動を覚えた。
いやほんと、すごいよこれ。
評価:10点
2024/9/15 読了
以下、ネタバレ箇所を含めた感想
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