当ブログについて
はじめに
当ブログは本、主に小説の感想を上げていくことを趣旨としています。
元々は自分のためにノートに感想を書いていて、それをwebにも上げてみたく思い、開設に至りました。
その為、誰かに紹介するようなスタンスではなく、ただ淡々と思ったことや良かった点について書き連ねる形のものが多いと思います。
また、僕は読書歴の浅い人間ですので、あまり造詣は深くない事をご了承ください。
ネタバレについて
本ブログでは、ネタバレなしの感想を先に載せて、その少し下にネタバレありの感想を載せるという形式をとっています。
これは、元々ネタバレを含んだ感想からネタバレ箇所を削って、ネタバレなしの感想としています。
本当は別個に書くべきなのでしょうが、何分めんどくさがりなものでして。
ネタバレの基準としては、話の真相に関わる内容......でしょうか?
ミステリで言えば犯人、トリック、動機ですね。その具体的な内容をまだ読んでいない人に喋るのは、一ミステリ読みとして絶対に避けたいです。
ただ、「展開に驚いた」とか「伏線の張り方が巧い」などの、真相に対する具体性のない感想は語ります。
なので、そういった要素の有無すら知りたくない方は読まれない方が良いかと。
あと、真相や意外な展開ではない場面については普通に語ります。
でないと作品の良さを語るのは非常に難しいので。
具体的にどんなシーンがあるのかすら知らず、先入観も何もない状態で作品を楽しみたいと考える方にも、あまり勧められないかもしれません。
ご了承のほどを何卒宜しくお願い致します。
続きを読む『地獄変・偸盗(新潮文庫)』 芥川龍之介
内容(amazonより引用)
“王朝もの"の第二集。
芸術と道徳の相剋・矛盾という芥川のもっとも切実な問題を、「宇治拾遺物語」中の絵師良秀をモデルに追及し、古今襴にも似た典雅な色彩と線、迫力ある筆で描いた「地獄変」は、芥川の一代表作である。
ほかに、羅生門に群がる盗賊の凄惨な世界に愛のさまざまな姿を浮彫りにした「偸盗」、斬新な構想で作者の懐疑的な人生観を語る「薮の中」など6編を収録する。
感想(ネタバレなし)
『羅生門・鼻』に引き続き、芥川の初期の”王朝もの”が揃った短編集。
表題作の「偸盗」は、所謂ファムファタールもので、主人公の兄弟と、二人を魅了する沙金のそれぞれの思惑が重なる、ドラマチックな一編。
兄と弟の絶妙なすれ違いもあり、手に汗握るバトルシーンもあり、と見どころ満載なのだが、オチに違和感が......。
どうも作者本人も出来に納得していないらしく、”自分の一番の悪作”としているらしい。
何もそこまで言わんでも。
「地獄変」を読むのは二度目で、初見ではその衝撃的な破局に目を奪われたが、今回は恐ろしいまでに見事な構成に気づかされる。
実に流麗な筆運びで、歴史の枠組みから絵師・吉秀という人物を浮かび上がらせ、最後には時の無常さを眼前にえぐり出す。
本当に溜め息しか出ないほどの傑作である。
「往生絵巻」は変化球で、演劇の台本のようにほとんどセリフのみで構成されている。
わずか8ページの中で、浄土を求めた男の業の深さと、味わい深いラストシーンを描き切っており、その凄さにただただ圧倒される。
やっぱ芥川って偉大なんだなぁ(今更)。
評価:なし(文学作品のため)
2025/3/10 読了
『赤い博物館』 大山誠一郎
内容(amazonより引用)
警視庁付属犯罪資料館、通称「赤い博物館」の館長・緋色冴子はコミュニケーション能力は皆無だが、ずば抜けた推理力を持つ美女。そんな冴子の手足となって捜査を行うのは、部下の寺田聡。過去の事件の遺留品や資料を元に、難事件に挑む二人が立ち向かった先は――。
予測不能なトリック駆使、著者渾身の最高傑作! TVドラマ原作
感想(ネタバレなし)
未解決の事件を、窓際に追いやられた刑事と、キャリアで美人の上司が解決に導くという、あまりにコッテコテな設定だが、そこからは考え付かないほどキレッキレの短編揃いで驚いた。
一見地味でなんの仕掛けもなさそうな事件が、真相を語られた途端にその様相が一変する。
しかもそれらを5編全てでやってのけるから凄い。
「復習日記」は、犯人の残した手記とわずかな聞き込みのみで展開される傑作。
現実味は薄いが、たった一つの描写から、○○が変わってしまうトリックが凄まじい。
事件の裏に潜む愛憎も含め、読み応え抜群の一編。
マイベストは「死が共犯者を別つまで」。
交通事故に遭った男が、死に際に自白した交換殺人を突き止めるというプロットの時点でめちゃくちゃワクワクするのだが、その期待をしっかり超えてきてくれる。
時効を過ぎた事件を解く意味も作り込んであり、抜かりなし。
一時間の刑事ドラマっぽい設定(現にドラマ化された)から、ド本格のミステリを楽しめる、素晴らしい短編集だった。
評価:8点
2025/3/7 読了
以下、ネタバレ箇所を含めた感想
続きを読む『それからはスープのことばかり考えて暮らした』 吉田篤弘
内容(amazonより引用)
路面電車が走る町に越して来た青年が出会う、愛すべき人々。いくつもの人生がとけあった「名前のないスープ」をめぐる、ささやかであたたかい物語。
感想(ネタバレなし)
どこかしら昭和の匂いがする街で、主人公が少しだけ変わった人々と静かな交流をする。
本当にそれだけで、目立ったドラマもさほどない。
にも関わらず、片時も退屈することなく読み切らせるのは、並大抵の作家にはできないことだ。
それは偏に、文章のセンスと、魅力的なキャラクターの賜物だと思う。
肩の力が抜けたやさしい筆致。
それにより、主人公がサンドイッチを食べれば、それがとてもおいしそうに見えるし、町を眺めればその光景が目に広がるように感じる。
街の人たちも、個性的だが変わり者すぎず、作り物めいていない素朴さを感じられて素敵だ。
中でもある女性と主人公との関係がまた味があって良い。
恋愛や友情や家族愛とも違う、言葉にしがたい関係の中に、人の根にあるような人間愛を感じた。
そう、それは気まぐれに作られたスープのように。
複雑でつかみどころがなく、でもとにかくおいしい!
心あたたまる、良い小説でした。
評価:7点
2025/3/1 読了
『無垢なる花たちのためのユートピア』 川野芽生
内容(amazonより引用)
純粋無垢な少年たちとその指導者を乗せ、天空をゆく船。最も楽園に近いはずの船上で起きた悲劇と、明らかになる真実とは(「無垢なる花たちのためのユートピア」)。人間が人形へと変化してしまう病が流行った村で、ひとり人間のままの姿で救出された少女は、司祭のもとで手厚く看病される。しかし怪我が癒え、うつくしさを取り戻した少女は限りなく人形に近づいているようで……(「人形街」)。歌人・小説家川野芽生の初小説集、待望の文庫化。
感想(ネタバレなし)
芥川賞の候補に著作が選ばれ、マルチな分野で才能を見せる作者の、初の小説集.......らしい。何も調べず、直感で選んだので情報がなかったのだが、ジャンルとしてはSF・幻想小説にあたるか。
世界観が難しく、理解できる話と理解できない話が半分半分だった。
表題作は比較的理解しやすい。
楽園に辿り着くために、”先生”から選ばれた”花”たち。
悪徳が排除されたある種の密室で人が死ぬという、変わり種のミステリとしても楽しめる。
最初と最後の間の3作は、はっきり言ってよく分からん。
何となくの雰囲気は伝わるのだが、もっと説明してほしいというのは野暮だろうか?
まあ野暮か。
「卒業の終わり」は素晴らしかった。
主人公と距離の近い友人、雨椿と、あまり言葉を交わさないクラスメイトの、月魚の間で、友情に思い悩むという極めてミニマルでリアリティのある話から、じわじわと残酷な世界が顔を出すというスケールの移り変わりが良かった。
ただ不条理なものを描くだけで終わらないのも好き。
気高く美しい短編集だった。
評価:なし(文学作品のため)
2025/2/25 読了
『プレゼント』 若竹七海
内容(中央公論社公式サイトより引用)
トラブルメイカーのフリーターと、ピンクの子供用自転車で現場に駆けつける警部補――。間抜けで罪のない隣人たちが起こす事件はいつも危険すぎる!
感想(ネタバレなし)
葉村晶、初登場。
物語開始時点では探偵じゃないが、有能さと不運さはこの頃からなので、なにも違和感なく、後発のシリーズ同様に楽しめる。
「海の底」は葉村シリーズらしい、エッジの効いた一編。
真相が皮肉全開で、なんとも言えない嫌な気持ちになる。
始まりからこれか。
この作品は葉村のみが主人公ではなく、後の”御小柴くんシリーズ”に登場する小林警部補が主役の話が、交互に繰り広げられる。
そちらのシリーズは未読だったので、小林警部補と御子柴くんのキャラ立ちが今一つに感じた。
しかし、表題の「プレゼント」に関しては、キャラが活きた、ひねりのある展開で読み応えがあった。
そしてなにより面白かったのが「トラブル・メイカー」のとあるシーン。
これは笑っちゃうでしょ。
まだ粗削りながら、著者の魅力が詰まった短編集だった。
評価:6点
2025/2/9 読了
以下、ネタバレ箇所を含めた感想
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