当ブログの感想の目次です。
作家別に五十音順で並んでおります。
付けている点数は、個人的な10点満点中の評価です。
あくまで主観的な基準によるものであり、専門家でも識者でも何でもない一個人の好みによる採点なので、軽い気持ちでご覧いただけると幸いです。
当ブログは本、主に小説の感想を上げていくことを趣旨としています。
元々は自分のためにノートに感想を書いていて、それをwebにも上げてみたく思い、開設に至りました。
その為、誰かに紹介するようなスタンスではなく、ただ淡々と思ったことや良かった点について書き連ねる形のものが多いと思います。
また、僕は読書歴の浅い人間ですので、あまり造詣は深くない事をご了承ください。
本ブログでは、ネタバレなしの感想を先に載せて、その少し下にネタバレありの感想を載せるという形式をとっています。
これは、元々ネタバレを含んだ感想からネタバレ箇所を削って、ネタバレなしの感想としています。
本当は別個に書くべきなのでしょうが、何分めんどくさがりなものでして。
ネタバレの基準としては、話の真相に関わる内容......でしょうか?
ミステリで言えば犯人、トリック、動機ですね。その具体的な内容をまだ読んでいない人に喋るのは、一ミステリ読みとして絶対に避けたいです。
ただ、「展開に驚いた」とか「伏線の張り方が巧い」などの、真相に対する具体性のない感想は語ります。
なので、そういった要素の有無すら知りたくない方は読まれない方が良いかと。
あと、真相や意外な展開ではない場面については普通に語ります。
でないと作品の良さを語るのは非常に難しいので。
具体的にどんなシーンがあるのかすら知らず、先入観も何もない状態で作品を楽しみたいと考える方にも、あまり勧められないかもしれません。
ご了承のほどを何卒宜しくお願い致します。
続きを読む内容(amazonより引用)
精神科医の象山は家族を愛している。だが彼は知っていた。どんなに幸せな家族も、たった一つの小さな亀裂から崩壊してしまうことを――。やがて謎の薬を手に入れたことで、彼は人知を超えた殺人事件に巻き込まれていく。
謎もトリックも展開もすべてネタバレ禁止!
前代未聞のストーリー、尋常ならざる伏線の数々。
多重解決ミステリの極限!
感想(ネタバレなし)
※以下はネタバレ箇所を隠した感想です※
『はらわた』『いけにえ』と、グロ要素を薄めた作風で大傑作をものし、本作もあらすじだけを見てその流れを汲んだ作品かと勘ぐったが、お門違いも甚だしかった。
いつも通り、いやいつも以上に頭がおかしい。
ネタバレを抜きにして抽象的な表現に留めて言うと、展開の仕方が凄まじい。
頭で思い描いていた物語には絶対ならないし、何度驚嘆したか憶えていられないくらいに翻弄された。
ではそれが完全に無軌道かと言えば、全くそうではない。
何故なら、白井智之の創る世界は、論理が絶対の支配者だからだ。
○○なんて異常にもほどがあるのに、その上出てくる推理がまぁ奇想の極みだし、伏線の量も夥しい。
最後に明かされるトリックなんかもう、言葉を失ったね。
その想像力と、人でなし具合に。
これは評価されて当然の出来だし、これが賞レースで受け入れられるのが本格ミステリというジャンルの公平さに違いない。
しかし、世の倫理に真っ向から中指を立てているので、広くは受け入れられないだろう。寧ろ受け入れられるような世の中はおかしいまである。
ただ、この鬼才が好き勝手に進む行く末を、どこまでも見届けたい。
そう思わずにはいられないのだ。
評価:9点
2024/3/10 読了
以下、ネタバレ箇所を含めた感想
続きを読む内容(光文社サイトより引用)
中学校の国語の時間。「走れメロス」の音読テープに耳をふさいだ森見少年は、その後、くっついたり離れたりを繰り返しながらも、太宰の世界に惹かれていった――。読者を楽しませることをなによりも大切に考えた太宰治の作品群から、「ヘンテコであること」「愉快であること」に主眼を置いて選んだ十九篇。「生誕百年」に贈る、最高にステキで面白い、太宰治の「傑作」選!
感想(ネタバレなし)
太宰の作品群から、森見登美彦が独自の軸で選ぶという、一風変わった短編集。
作風が幅広く、小説は勿論のこと、随筆から論評、『井伏鱒二選集』後記に至るまで、あらゆる形式でユーモアに富んだ文章を楽しめる。
小説で言うと、「猿面冠者」が好み。
小説を書くことに悩む青年を主人公に据えた入れ子構造になっているのが面白い。
デビュー作で傑作を出したと浮かれ、道行く人に顔が知られていると思い込んで挨拶をしまくり、結果鳴かず飛ばずの上紙面で手酷く貶され、怒りでカツレツを切り刻むところは森見イズムを感じて、めちゃくちゃ笑った。
「女の決闘」が傑作で、本邦では知名度の低いドイツの短編を妄想により何倍も膨らませる様が見事。
とにかく奇想とユーモアで読者を楽しませようとした人なのだという選者の評がしっくりくる。
そして掉尾を飾るあの「走れメロス」が、道徳を説く寓話から、へんてこで愛おしい物語へと捉え方が変わるのは、編集の妙というほかない。
良い意味で太宰のイメージが変わったし、他の作品も読みたいと思った。
評価:なし(文学作品のため)
2024/3/8 読了
内容(amazonより引用)
惑星ソラリス――この静謐なる星は意思を持った海に表面を覆われていた。惑星の謎の解明のため、ステーションに派遣された心理学者ケルヴィンは変わり果てた研究員たちを目にする。彼らにいったい何が? ケルヴィンもまたソラリスの海がもたらす現象に囚われていく……。人間以外の理性との接触は可能か?――知の巨人が世界に問いかけたSF史上に残る名作。レム研究の第一人者によるポーランド語原典からの完全翻訳版
感想(ネタバレなし)
古典の名作SFということで、当たり前に難しい。
地球外生命体との接触を図る、俗に言う”ファーストコンタクトもの”の礎となった作品らしい。それにしては完成されすぎている。
高度な知性を持つとされている「海」を解析したソラリス学はディティールを凝りに凝っている。
物質の組成とか、習性など、とにかく詳らかに記述されるため、正直ほとんど頭に入っていない。
だが、面白く読めないわけではなく、海により再現された、主人公がかつて亡くした恋人のハリーを巡るストーリーがとても好みだった。
所謂、哲学におけるスワンプマンを地で行くもので、理屈と心の狭間で葛藤した末に出した彼らの結論が、非常に人間的で良かった。
それだけに、その辺が割とあっさり切り上げられたのは残念でならない。
しかも最終盤にある怒涛の文献が一番キツくて、テンションダダ下がり。
でもやっぱり地球外生命体と人間というテーマでこれだけ先進的な答えを昔に出しているのは凄いし、読む価値はあるなぁと思う。
評価:7点
2024/3/3 読了
内容(amazonより引用)
永遠の不良・寺山修司による家出のススメ
平均化された生活なんてくそ食らえ。本も捨て、町に飛び出そう。家出の方法、サッカー、ハイティーン詩集、競馬、ヤクザになる方法……、天才アジテーター・寺山修司の100%クールな挑発の書。
感想(ネタバレなし)
寺山の作品に触れるのは初めてだったが、中々面白かった。
本書は主にエッセイ8割、詩が2割くらいで構成されており、どちらを通しても著者のハングリーな信条を強く感じられる。
安定を捨て去り、何か一つ突き抜けたものを手にする”一点豪華主義”は、確かにジッドの『地の糧』のイデアに近い。
また、出てくる人物が、現実にいるのか疑わしくなる程に個性的だ。
片目の馬に賭け続ける萩さんの話は、最後の一行に痺れた。
性や自殺といった、普通は不健全なものとして封殺されそうな話題をクールに話しているのも特徴の一つと言える。
「サッカーはタマが大きいから流行っている」なんてことを真面目に、しかもカッコよく書けるなんて、並大抵のことではない。
独特な考え方を、キレのある文章で味わえる、良いエッセイだった。
評価:7点
2024/2/29 読了
内容(amazonより引用)
殺人を企む一人の男が、土砂崩れを前に途方にくれた。
復讐相手の住む荒土館が地震で孤立して、犯行が不可能となったからだ。
そのとき土砂の向こうから女の声がした。声は、交換殺人を申し入れてきた――。
同じころ、大学生になった僕は、
旅行先で「名探偵」の葛城と引き離され、
荒土館に滞在することになる。
孤高の芸術一家を襲う連続殺人。葛城はいない。僕は惨劇を生き残れるか。
感想(ネタバレなし)
※以下はネタバレ箇所を隠した感想です※
館四重奏シリーズ(というらしい)の第三弾。
趣向が変わっていて、今回は葛城、田所、そして紅蓮館以来の登場となる飛鳥井にそれぞれ焦点を当てた三部構成になっている。
第一部は言わば前菜的な事件を葛城が解決するお話。
前巻で鮮やかな復活を遂げたので、もう名探偵として完成されたのかと思いきや、人間味のある場面が数多く見れて良かった。
”探偵は生き方”というテーマを非常に丁寧に掘り下げているシリーズだなとつくづく思う。
メインである二部以降は要素がてんこ盛り。
本ミスらしいアレやコレやが凝縮されていて、ジャンル自体の楽しさを再確認するような思いだった。
あと、普段ワトソン役の田所くんが大健闘しているのも嬉しい。
そして飛鳥井さんが満を持して探偵に返り咲き......と最高に盛り上がる展開で明かされる犯人が完全に想定内だったのは残念。
とは言えトリックには驚けたし、ストーリーも熱かったので満足。
探偵として生きる彼らの行く末がどうなるかも含め、最終作に寄せる期待は高い。
評価:8点
2024/2/25 読了
以下、ネタバレ箇所を含めた感想
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