立ち向かう振りの妄想癖

読んだ本の感想を雑に放ります(ミステリ多め)。超不定期更新です。

『銀河鉄道の夜』(新潮社) 宮沢賢治

内容(amazonより引用)

貧しく孤独な少年ジョバンニが、親友カムパネルラと銀河鉄道に乗って美しく哀しい夜空の旅をする、永遠の未完成の傑作である表題作や、「よだかの星」「オツベルと象」「セロ弾きのゴーシュ」など、イーハトーヴォの絢爛にして切なく多彩な世界に、「北守将軍と三人兄弟の医者」「饑餓陣営」「ビジテリアン大祭」を加えた14編を収録。賢治童話の豊饒な醍醐味をあますところなく披露する。

 

 

感想(ネタバレなし)

宮沢賢治の童話集。
同じ新潮社から出版されている『風の又三郎』は、思いの外ダークな作品が多かったが、こちらは以前から抱いていたイメージに近く、崇高で美しい話と、楽しいコメディテイストの話がメインだった。

よだかの星」はその前者にあたる。
出だしで醜い鳥と書かれ、鷹にいびられ、善行をしても顧みられない。
責め苦を受けて尚、命を奪ってしか生きられないことに嘆き、星になる為に上昇するよだかの精神は、矢張り気高く美しい。

表題作も実に世界観が綺麗。
鉄道で宇宙を往く旅の、描写一つ一つがキラキラと輝き、心を奪われる。
タイタニック号事件に触れられていたのが驚いた。
旅の果てにある真実、自らを灼く炎の瞬き、それらが強く胸を打つ。
後世に与えた影響の大きさも頷ける名作だった。

コメディテイストの作品も出来が良く、「飢餓陣営」なんかは展開がツッコみどころ満載でめっちゃ笑った。

「ビジタリアン大祭」は、今で言うヴィーガンとそのアンチの論争を描いた作品。
科学・倫理・宗教といった多角的なアプローチでディベートが繰り広げられ、著者の知識量に圧倒された。
それはそれとして肉は食うが。

独特な世界観の、良い物語たちだった。

 

評価:なし(文学作品のため)

2023/12/28 読了