立ち向かう振りの妄想癖

読んだ本の感想を雑に放ります(ミステリ多め)。超不定期更新です。

『幸福な王子』 ワイルド

内容(amazonより引用)

広場に立てられた王子の像が、宝石でできた自分の目や体じゅうの金箔を、燕に頼んで貧しい人々に分け与えてしまう『幸福な王子』。若い学生が恋人にささげる赤いばらを、一羽のナイチンゲールが死をもって与えてやる『ナイチンゲールとばらの花』など、十九世紀イギリスの小説家オスカー・ワイルドが格調高い文章で綴った、献身的な人間愛と社会への諷刺にあふれる9編を収めた童話集。

 

 

感想(ネタバレなし)

※以下はネタバレ箇所を隠した感想です※

海外のほぼ知らない作者の童話集ということで、普段手を出すジャンルと一切が異なっていたが、大変興味深く読めた。

どの作品も愛や自己犠牲の美しさ、傲慢がもたらす悲劇等の教訓話的な観念が中心にあり、そういう意味では前もって想像していた童話のイメージに近い。ただ、一筋縄ではいかない。

表題作は、意志をもつ王子の像が、つばめに頼んで自らの体に装飾された宝石を貧しき人々に分け与えるという献身が胸を打つ一編。......なのだが、○○がやるせない。
果たして、これを”尊い自己犠牲”の言葉で済ませてよいのだろうか......。

他の話も人間の陰が深く刻まれている。
だがその過酷さが、愛の尊さをより眩いものにしているのは間違いない。
「漁師とその魂」で描かれる愛は、どんな宝石よりも価値があるように見えた。
人の心に棲む、最も高貴なものの存在を、この童話集を通して少し理解できた気がする。

 

 

評価:なし(文学作品のため)

2023/9/4 読了

 

以下、ネタバレ箇所を含めた感想

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

感想(ネタバレあり)

海外のほぼ知らない作者の童話集ということで、普段手を出すジャンルと一切が異なっていたが、大変興味深く読めた。

どの作品も愛や自己犠牲の美しさ、傲慢がもたらす悲劇等の教訓話的な観念が中心にあり、そういう意味では前もって想像していた童話のイメージに近い。ただ、一筋縄ではいかない。

表題作は、意志をもつ王子の像が、つばめに頼んで自らの体に装飾された宝石を貧しき人々に分け与えるという献身が胸を打つ一編。......なのだが、彼らの気高い精神が誰にも気づかれず、俗人たちの手によって文字通り粉々にされてしまうのがやるせない。
果たして、これを”尊い自己犠牲”の言葉で済ませてよいのだろうか......。

他の話も、”己の醜さを知って絶望し、命を落とす小びと”や”自分の好きな美しいもが、大勢の人間の苦しみから成るものだと知り、消沈する王”など、人間の陰が深く刻まれている。
だがその過酷さが、愛の尊さをより眩いものにしているのは間違いない。
「漁師とその魂」で描かれる愛は、どんな宝石よりも価値があるように見えた。
人の心に棲む、最も高貴なものの存在を、この童話集を通して少し理解できた気がする。

 

下線部がネタバレ箇所です