立ち向かう振りの妄想癖

読んだ本の感想を雑に放ります(ミステリ多め)。超不定期更新です。

『アルジャーノンに花束を』 ダニエル・キース

内容(amazonより引用)

32歳になっても幼児なみの知能しかないチャーリイ・ゴードン。そんな彼に夢のような話が舞いこんだ。大学の先生が頭をよくしてくれるというのだ。これにとびついた彼は、白ネズミのアルジャーノンを競争相手に検査を受ける。やがて手術によりチャーリイの知能は向上していく…天才に変貌した青年が愛や憎しみ、喜びや孤独を通して知る人の心の真実とは?全世界が涙した不朽の名作。著者追悼の訳者あとがきを付した新版。

 

感想(ネタバレなし)

※以下はネタバレ箇所を隠した感想です※

読後、少し呆然としてしまった。
これ程までに読者の心に爪痕を残す物語もそうないだろう。

まず触れるべき点は秀逸すぎるプロットだ。
知的障がいを持った人間が、手術により徐々に高い知性を獲得していく。
類稀なストーリーが、巧みな文章表現によって展開される。

ただ、本書が名作たる所以は表面的な奇抜さになく、視点の反転により暴かれる人間の残酷な本性にある。
周りの人を慕い、賢くなりたいと真っすぐに願っていたチャーリィが、時間を経るごとに、人間としての尊厳を踏み躙られた過去を理解できるようになってしまう。その心境の変化がただただ辛い。

特に腹が立ったのが彼の母の盲目さで、その身勝手な振る舞いにフィクションの人物であることを忘れて本気で嫌いになった。

終盤の展開は輪をかけて心が痛む。
人の心とかないんか?

ラスト数ページは、涙を禁じえなかった。
ただ、僕は今も、チャーリィが幸せだったか不幸せだったかの答えを出せずに、考えている。

感動の名作などという言葉では消化できない、凄まじい作品だった。

 

評価:10点

2023/10/9 読了

 

以下、ネタバレ箇所を含めた感想

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

感想(ネタバレあり)

読後、少し呆然としてしまった。
これ程までに読者の心に爪痕を残す物語もそうないだろう。

まず触れるべき点は秀逸すぎるプロットだ。
知的障がいを持った人間が、手術により徐々に高い知性を獲得していく。
類稀なストーリーが、巧みな文章表現によって展開される。

ただ、本書が名作たる所以は表面的な奇抜さになく、視点の反転により暴かれる人間の残酷な本性にある。
周りの人を慕い、賢くなりたいと真っすぐに願っていたチャーリィが、時間を経るごとに、人間としての尊厳を踏み躙られた過去を理解できるようになってしまう。その心境の変化がただただ辛い。

特に腹が立ったのが彼の母の盲目さで、その身勝手な振る舞いにフィクションの人物であることを忘れて本気で嫌いになった。

終盤の展開は輪をかけて心が痛む。
一度得た知性を段々と失わせるとか鬼畜の所業だろ。
人の心とかないんか?

ラスト数ページは、汚れのないやさしさに打ち震え、涙を禁じえなかった。
ただ、僕は今も、チャーリィが幸せだったか不幸せだったかの答えを出せずに、考えている。

感動の名作などという言葉では消化できない、凄まじい作品だった。

 

下線部がネタバレ箇所です