立ち向かう振りの妄想癖

読んだ本の感想を雑に放ります(ミステリ多め)。超不定期更新です。

『名探偵、初心者ですが』 歌野晶午

内容(amazonより引用)

ワーカホリック気味の独身刑事・舞田歳三は、高利貸しの女が被害者となった放火殺人を捜査することに。
債務者や商売敵など容疑者は浮上するものの、決定的な証拠が見つからない。
だが、歳三は11歳の姪・ひとみの言葉をきっかけに、事件の盲点に気付く。
そして明らかになったのは、全てをひっくり返す驚きの真相だった!
叔父と姪の微笑ましい日常に張り巡らされた巧妙な伏線。どんでん返し満載の6編を収録した連作ミステリ。
(『舞田ひとみ11歳、ダンスときどき探偵』改題)

 

 

感想(ネタバレなし)

タイトルと表紙でライトな印象を受けるが、内実はゴリッゴリの本格ミステリ
多様な事件が、鮮やかに紐解かれる。

全体的に粒ぞろいで、「黒こげおばあさん~」はシンプルな事件ながらトリック、伏線の切れ味が鋭いし、「金銀~」は奇怪なシチュエーションを解決する論理が面白い。

その中でも「いいおじさん、わるいおじさん」と「いいおじさん?わるいおじさん?」の2作が優れていた。
この趣向は、連作ミステリならではでとても良い。

また、ミステリとしての魅力だけではなく、人間ドラマの面にも力が入っている。
話の中心になっているひとみちゃんは年不相応な言動と年相応な無邪気さがあってかわいいし、舞田親子に叔父として関わろうとする主人公の歳三の心情も描写が絶妙。

その関係性に一つの答えを出す「そのひとみに映るもの」は、本作の締めを見事に飾っている。
良き連作短編集でした。

 

評価:8点

2023/10/10 読了

 

以下、ネタバレ箇所を含めた感想

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

感想(ネタバレあり)

タイトルと表紙でライトな印象を受けるが、内実はゴリッゴリの本格ミステリ
多様な事件が、鮮やかに紐解かれる。

全体的に粒ぞろいで、「黒こげおばあさん~」はシンプルな事件ながらトリック、伏線の切れ味が鋭いし、「金銀~」は奇怪なシチュエーションを解決する論理が面白い。

その中でも「いいおじさん、わるいおじさん」と「いいおじさん?わるいおじさん?」の2作が優れていた。
前者だけでも完結していた話を後の話で全く違う印象に変えてしまうこの趣向は、連作ミステリならではでとても良い。

また、ミステリとしての魅力だけではなく、人間ドラマの面にも力が入っている。
話の中心になっているひとみちゃんは年不相応な言動と年相応な無邪気さがあってかわいいし、舞田親子に叔父として関わろうとする主人公の歳三の心情も描写が絶妙。

その関係性に一つの答えを出す「そのひとみに映るもの」は、本作の締めを見事に飾っている。
良き連作短編集でした。

 

下線部がネタバレ箇所です