立ち向かう振りの妄想癖

読んだ本の感想を雑に放ります(ミステリ多め)。超不定期更新です。

『逢魔宿り』 三津田信三

内容(amazonより引用)

元編集者で現ホラー・ミステリ作家の「僕」のもとに、昔仕事をしたデザイナー・松尾から連絡が入った。「小説 野性時代」に連載している連作怪奇短篇について、話したいことがあるという。各短篇は、それぞれ他人から聞いた体験談を基に小説化したもので、松尾とは何も関係がないはず。訝りながら家を訪ねた「僕」に、松尾は三十年前の出来事を語りだした。それは、日課の散歩中にある四阿で出会った、怪異譚を語りたがる奇妙な一家の話であった。子供時代に山小屋で遭遇した怪異、障子に映った奇妙な影絵、宿直していた学校で起きた異変。彼らが怪異譚を語るたび、なぜか松尾の近隣で事件が多発し……。(「逢魔宿り」) ほか、「お籠りの家」「予告画」「某施設の夜警」「よびにくるもの」の4編を収録した、珠玉のホラー連作短編集。

 

 

感想(ネタバレなし)

安定の三津田ホラー。紙上という強い制約の中でちゃんと怖がらせてくれる。

各編のテイストはかなり異なる。
「予告画」は題材がとにかく秀逸。
”子どもが予知のような形で人の死を描く”というギミックがスリラーの要素として活かされていて、ページをめくる手を止まらせない。
ミステリ作家らしいトリックも飛び出し、短編ながらかなり満足度の高い一編だった。

「某施設の夜警」はシチュエーションが怖い。
宗教団体が居を構える施設を夜に警備するという概要だけでも十二分に怖さが伝わるだろう。極め付きは終盤の展開で、突飛すぎる遭遇に恐れおののいた。この理不尽で道理が通らない感じがホラーの醍醐味だよなー。

ラストの表題作は、伝聞形式で複数の怪談を読めるのが純粋にお得感あって好き。
連作を利用した仕掛けは控えめだが、このくらいが作為性薄くてちょうどいいと思った。

納涼に適した良作怪談集でした。

 

評価:7点

2023/8/15 読了