立ち向かう振りの妄想癖

読んだ本の感想を雑に放ります(ミステリ多め)。超不定期更新です。

『秋雨物語』 貴志祐介

内容(amazonより引用)

生きながら、地獄に堕ちるということ――。恐るべき新シリーズ始動!

失踪した作家・青山黎明が遺した原稿。それは彼を長年悩ませる謎の転移現象の記録だった。転移に抵抗する青山だったが、更なる悪夢に引きずり込まれていく(「フーグ」)。ある呪いを背負った青年の生き地獄、この世のものとは思えないある絶唱の記録など、至高のホラー4編による絶望の連作集。『黒い家』『天使の囀り』『悪の教典』……いくつもの傑作を生み出した鬼才・貴志祐介が10年以上にわたり描き続けた新シリーズが遂にベールを脱ぐ。

 

 

感想(ネタバレなし)

ひっさびさに貴志祐介作品を読んだが、やはり面白かった。
民俗学から都市伝説、スピーカーの仕組みまで、幅広い知識が話に組み込まれていて、単純にためになる。
展開される物語も、その知識の広さと深さに裏打ちされて、読者をぐいぐいと引き込んでくれる。

短編の出来としては「フーグ」が抜きんでていた。
行方不明の作家が遺した原稿を読み進めるうちに、作家の抱えていた異常な悩みが徐々に明らかになるプロットがまず素晴らしい。こういう形式いいよなぁ......。
無意識のうちにどこか遠い場所へ移動してしまうという現象が想像しやすくて怖いし、恐れが膨らむ程に文が支離滅裂になるのも狂気に近づく感じがしてゾクゾクした。
オチまで決まって完璧。

他だと「こっくりさん」もTHE・都市伝説な内容で好き。

オカルト的なケレン味たっぷりの良作短編集だった。

 

評価:7点

2023/10/15 読了