立ち向かう振りの妄想癖

読んだ本の感想を雑に放ります(ミステリ多め)。超不定期更新です。

『向日葵を手折る』 彩坂美月

内容(amazonより引用)

消えた向日葵、連続する不穏な事件――
多感な少女の感情を繊細に描く、慟哭必至の傑作青春ミステリ

父親が亡くなり、山形の集落に引っ越した小6の高橋みのり。
初めての夏、「向日葵流し」のために育てられていた向日葵の花が、何者かによってすべて切り落とされる事件が起きる。
みのりの周囲ではさらに不穏な事件が続き――。彼女の4年間の成長と事件の行方を瑞々しい筆致で描く、感動の長編青春ミステリ。

 

 

感想(ネタバレなし)

※以下はネタバレ箇所を隠した感想です※

小説だけでも夏らしさをと思い、表紙とタイトルに惹かれ購入したが、傑作だった。

話の中心にあるのはいたって王道なジュブナイル期の出会いと心の触れあい。父を亡くし、失意に沈んだ少女が少年と出会い、自然の中で笑顔を取り戻していく。
ワシの大好物じゃ!

一方で、ただ純粋なガールミーツボーイのみでなく、田舎の閉鎖的な空気感や、陰惨な人間心理も描かれるのが巧いところ。
ショッキングな展開の数々を青春とくくるには余りにも痛ましいが、それ故にみのりと怜の結びつきがより強く浮かび上がる。

と、割と終盤まで良質なヒューマンドラマとして読んでいたので、種明かしの段に入り予想外に多い伏線が綺麗に回収され驚いた。
明かされる真相には、子どもが抱える理不尽さや、田舎の閉塞感が色濃く刻まれていて胸に残る。
それでも尚、ある事を示すラストも良い。

夏に相応しい、青春ミステリーだった。

 

評価:8点

2023/7/30 読了

 

以下、ネタバレ箇所を含めた感想

 

 

 

 

 

 

 

 

感想(ネタバレあり)

小説だけでも夏らしさをと思い、表紙とタイトルに惹かれ購入したが、傑作だった。

話の中心にあるのはいたって王道なジュブナイル期の出会いと心の触れあい。父を亡くし、失意に沈んだ少女が少年と出会い、自然の中で笑顔を取り戻していく。ワシの大好物じゃ!
一方で、ただ純粋なガールミーツボーイのみでなく、田舎の閉鎖的な空気感や、陰惨な人間心理も描かれるのが巧いところ。

ショッキングな展開の数々を青春とくくるには余りにも痛ましいが、それ故にみのりと怜、そして隼人の結びつきがより強く浮かび上がる。

と、割と終盤まで良質なヒューマンドラマとして読んでいたので、種明かしの段に入り予想外に多い伏線が綺麗に回収され驚いた。
明かされる真相には、子どもが抱える理不尽さや、田舎の閉塞感が色濃く刻まれていて胸に残る。
それでも尚、大人になれる事を示すラストも良い。夏に相応しい、青春ミステリーだった。

 

下線部がネタバレ箇所です