立ち向かう振りの妄想癖

読んだ本の感想を雑に放ります(ミステリ多め)。超不定期更新です。

『逆ソクラテス』 伊坂幸太郎

内容(amazonより引用)

「敵は、先入観だよ」学力も運動もそこそこの小学6年生の僕は、転校生の安斎から、突然ある作戦を持ちかけられる。カンニングから始まったその計画は、クラスメイトや担任の先生を巻き込んで、予想外の結末を迎える。はたして逆転劇なるか!? 表題作ほか、「スロウではない」「非オプティマス」など、世界をひっくり返す無上の全5編を収録

 

感想(ネタバレなし)

主役が小学生だが、いつもの伊坂小説。つまり面白い。

初めの一篇である表題作の時点でカンニングやら美術品を盗むやらやりたい放題。その裏にある”先入観を覆す”というテーマは、本作に通底する観念で非常に倫理的だと思う。
物語のオチこそ見え見えであるが、著者らしい痛快な展開なのでとても満足感があった。

一方、オチに驚かされたのが「スロウではない」。
足が速い子がヒエラルキーの頂点に君臨するという懐かしのシステムに、足があんまり速くない主人公たちが立ち向かうという本筋が熱い。
終盤に明かされるある事実は、意外ながら納得感があり、何より話に何倍もの深みを生んでいて見事。伊坂短編の中でも上位に来る完成度の高さだった。
あと、ドン・コルレオーネごっこがツボ。

他の話も独特なおかしみとテーマの見せ方が楽しめる良作だった。

 

評価:7点

2023/7/20 読了