立ち向かう振りの妄想癖

読んだ本の感想を雑に放ります(ミステリ多め)。超不定期更新です。

『夏のレプリカ』 森博嗣

内容(amazonより引用)

T大学大学院生の簑沢杜萌は、夏休みに帰省した実家で仮面の誘拐者に捕らえられた。杜萌も別の場所に拉致されていた家族も無事だったが、実家にいたはずの兄だけが、どこかへ消えてしまった。眩い光、朦朧とする意識、夏の日に起こった事件に隠された過去とは? 『幻惑と死と使途』と同時期に起こった事件を描く。

 

感想(ネタバレなし)

※以下はネタバレ箇所を隠した感想です※

シリーズでも異色の7作目。
姉妹作である前作で前振りされていた通り、西之園萌の友人である杜萌が遭遇した誘拐事件が描かれる。

異色と語ったのは視点がほぼ事件を追う刑事と杜萌に終始し、主人公2人組の出番がかなり限られているからだ。
それじゃあもの足りないのかと言われればそんな事は全くなく、奇怪な事件と杜萌の過去を追うストーリーテリングが巧みで、興味を保ったまま読み進められた。
なんなら西之園萌がでしゃばらない分だけストレスフリーまである。

事件の構図自体も悟らせぬまま解決編へ。
なるほど、これはやられた。シンプルながら切れ味鋭いトリック。
”○○”という犀川の言葉が○○に対する指摘になっているのが素晴らしい。
また、解決編に至る流れが鮮やかで目を見張った。
○○による決着は、このシリーズ中のハイライトとも言える名場面だろう。
ところで、動機まわりのことがよく分かっていないのは僕だけでしょうか?

 

評価:8点

2023/8/28 読了

 

以下、ネタバレ箇所を含めた感想

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

感想(ネタバレあり)

シリーズでも異色の7作目。
姉妹作である前作で前振りされていた通り、西之園萌の友人である杜萌が遭遇した誘拐事件が描かれる。

異色と語ったのは視点がほぼ事件を追う刑事と杜萌に終始し、主人公2人組の出番がかなり限られているからだ。
それじゃあもの足りないのかと言われればそんな事は全くなく、奇怪な事件と杜萌の過去を追うストーリーテリングが巧みで、興味を保ったまま読み進められた。
なんなら西之園萌がでしゃばらない分だけストレスフリーまである。

事件の構図自体も悟らせぬまま解決編へ。
なるほど、これはやられた。シンプルながら切れ味鋭いトリック。
”客観的でないから”という犀川の言葉が萌と読者の両方に対する指摘になっているのが素晴らしい。
また、解決編に至る流れが鮮やかで目を見張った。
萌と杜萌のチェスによる決着は、このシリーズ中のハイライトとも言える名場面だろう。
ところで、動機まわりのことがよく分かっていないのは僕だけでしょうか?