立ち向かう振りの妄想癖

読んだ本の感想を雑に放ります(ミステリ多め)。超不定期更新です。

『黒猫館の殺人』 綾辻行人

内容(amazonより引用)

大いなる謎を秘めた館、黒猫館。火災で重傷を負い、記憶を失った老人・鮎田冬馬(あゆたとうま)の奇妙な依頼を受け、推理作家・鹿谷門実(ししやかどみ)と江南孝明(かわみなみたかあき)は、東京から札幌、そして阿寒へと向かう。深い森の中に建つその館で待ち受ける、“世界”が揺らぐような真実とは!? シリーズ屈指の大仕掛けを、読者(あなた)は見破ることができるか?

 

 

感想(ネタバレなし)

久方ぶりの館シリーズ
ボリュームも事件のスケールも、集大成だった前作に比べ落ち着いてはいる。
しかしながらそこは御大。抜群のストーリーテリングで読者を惹きつけてくれる。

過去の手記と現在の視点が入り混じる展開のスピード感。
文量の影響もあって割とあっさり解決編に入り、明かされる真相自体はまぁ大方予想通り。

......とか思っていたらシリーズ史上でも1、2を争う程の大トリックが仕掛けられていて驚嘆した。
しかもそれを補強する伏線が山のように提示されるので、あとがきの作者同様に感心するやら呆れるやら......。

また、犯人の動機も捻りが効いていて面白い。
作中で言われていた通り、犯人や構図といった8割の真相を読者は読めるかもしれない。だけど残りの2割に、これ程まで大胆で鮮やかなトリックを潜ませられるから凄い。

いやぁ、ミステリって本当にいいもんですね~。
館シリーズの名に恥じない一作でした。

 

評価:8点

2023/3/22 読了