立ち向かう振りの妄想癖

読んだ本の感想を雑に放ります(ミステリ多め)。超不定期更新です。

『箱庭の巡礼者たち』 恒川光太郎

内容(amazonより引用)

洪水で流れ着いた黒い箱は不思議な別世界と繋がっていた。王族が圧政を敷き、竜が生まれ、吸血鬼が人知れず夜を歩く、そんな「箱庭世界」の観察が少年・内野聖の青春だった。ある日、恋人の絵影久美が箱の中に行くと言い出す。二度と戻れないとしても、箱の外から見ていた自分にしかできないことを果たすために。ただ箱を見つめるだけだった二人の人生は、箱の中と外で目まぐるしく変わり始める(「箱の中の王国」)。時を越える時計、超強力な接着剤、意思を持った機械、そして不死の薬。異能の道具が紡ぐ一繋ぎの連作集。

 

 

感想(ネタバレなし)

※以下はネタバレ箇所を隠した感想です※

恒川光太郎がここまで連作短編集も巧いとは驚き。
一つ一つの話だけで長編並みのスケールなのに、それらが有機的に結びつき、とてつもなく壮大な世界観になる。
それも恒川氏らしい全く予想できない繋がりを見せるから堪らない!

好みの短編は「洞察者」。特別な才能を持った”ギフテッド”である主人公が施設を抜け出す......というアウトラインからは想像できない展開が魅力。特に○○シーンが意味わかんなくて大好き。
オチも、人間の冷たさと温かさが同居する、印象深いもので良かった。

そして何より素晴らしいのは各話に挟まる「物語の断片」と終話「円環の夜叉」だろう。
各話を予期せぬ角度から繋ぎ、最終話でとんでもない大風呂敷を畳み切る見事な手腕。
終わって漸く、全てが○○と分かる構成は最早芸術と言える。

連作短編集の、そして恒川氏の魅力がみっちり詰まった傑作だった。

 

評価:9点

2023/4/7 読了

 

以下、ネタバレ箇所を含めた感想

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

感想(ネタバレあり)

恒川光太郎がここまで連作短編集も巧いとは驚き。
一つ一つの話だけで長編並みのスケールなのに、それらが有機的に結びつき、とてつもなく壮大な世界観になる。
それも恒川氏らしい全く予想できない繋がりを見せるから堪らない!

好みの短編は「洞察者」。特別な才能を持った”ギフテッド”である主人公が施設を抜け出す......というアウトラインからは想像できない展開が魅力。特に通り魔犯(未遂)とコンビニでポテチを食べ合うシーンが意味わかんなくて大好き。
オチも、人間の冷たさと温かさが同居する、印象深いもので良かった。

そして何より素晴らしいのは各話に挟まる「物語の断片」と終話「円環の夜叉」だろう。
各話を予期せぬ角度から繋ぎ、最終話でとんでもない大風呂敷を畳み切る見事な手腕。
終わって漸く、全てが絵影とルルフェルを中心に回っていると分かる構成は最早芸術と言える。

連作短編集の、そして恒川氏の魅力がみっちり詰まった傑作だった。