立ち向かう振りの妄想癖

読んだ本の感想を雑に放ります(ミステリ多め)。超不定期更新です。

『ブレーメンの音楽師』 グリム

内容(amazonより引用)

ドイツ民族の中を流れる最も民族的なものに愛着を感じ、そこに民族の魂の発露を見たグリム兄弟がとらえたメルヘンの世界。本書には表題作のほか、『水の妖精』『悪魔とその祖母』『名親としての死神』『幸福のハンス』『三人の糸紡ぎ女』『狼と七匹の子やぎ』『赤ずきん』『いばら姫』『狐と鵞鳥』など38編を収録。
人の心を美しく気高くするグリム童話の真髄を伝える小品集である。

 

 

感想(ネタバレなし)

童話をこれだけしっかり読むというのは初めての経験かもしれない。多様な物語を多量に浴びた。

紹介にあるような美しさ、気高さはあまり感じられず、不条理でとんちきな展開はむしろボーボボとかのナンセンスギャグに近い。

表題作の「ブレーメンの音楽師」からして、主人公の動物達はブレーメンに行かないし、音楽をする描写も一切ない。ブレーメンの音楽師とは.......?
しかしながらその無軌道さの中に、なんでもいいじゃんとでも言うような自由な明るさがあって読み口は良い。

狙ってるであろうユーモアもセンスがある。
「かしこいハンス」は、かしこさのかけらも見当たらないハンスによる愚行の天丼がおもしろい。ある種ラブコメ的なオチも好み。
「三人の糸紡ぎ女」はオチ特化の小話で、予想だにしない、しかしながら納得感のある締め方に拍手を送りたくなる。

全体的にものすごいテンポの良さで全然予期せぬ方向に話が進んで行くので、現代小説に慣れ切った僕にはかなり新鮮に感じられた。
物語の論理的な型が未だなかった故の面白みなのだろう。

 

評価:なし(文学作品のため)

2023/7/11 読了