立ち向かう振りの妄想癖

読んだ本の感想を雑に放ります(ミステリ多め)。超不定期更新です。

『太陽の塔』(再々読) 森見登美彦

内容(amazonより引用)

私の大学生活には華がない。特に女性とは絶望的に縁がない。三回生の時、水尾さんという恋人ができた。毎日が愉快だった。しかし水尾さんはあろうことか、この私を振ったのであった! クリスマスの嵐が吹き荒れる京の都、巨大な妄想力の他に何も持たぬ男が無闇に疾走する。失恋を経験したすべての男たちとこれから失恋する予定の人に捧ぐ、日本ファンタジーノベル大賞受賞作。

 

 

感想(ネタバレなし)

※以下はネタバレ箇所を隠した感想です※

再々読だが、飽きもせずに笑えたし、新たな発見もあった。

今回目に付いたのは、私と遠藤の関係性の面白さ。
始めは私の水尾さん研究への障害として立ちはだかり、ゴキブリキューブを送り合うなりなんなりをしているうちに何故か打ち解け、水尾さんに恋する遠藤氏の背中を押すまでにになる。
全くもって阿呆らしいが、その分だけ愛おしい。
遠藤氏がモリミーの小説にしてはかなり珍しく普通の人である点も妙味だと思う。

あとは水尾さん自身の魅力だろうか。
私の”過去”として語られる水尾さんの発言や仕草はどこか抜けていて、それがどうしようもなく可愛らしい人物像を生んでいる。
水尾さんとの思い出が輝かしければ輝かしい程、今の私と彼女との距離の遠さが胸を刺す。
何が水尾さん研究だよ、今でも忘れられないだけじゃねぇか。

私の妄想と水尾さんの弓による浮遊感に包まれ、物語は幕を閉じる。
祭りの後のような侘しさが、散々笑った小説の最後を飾るのがいいなぁ。
やっぱ傑作だわ。

 

評価:9点

2023/12/24 読了

 

以下、ネタバレ箇所を含めた感想

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

感想(ネタバレあり)

再々読だが、飽きもせずに笑えたし、新たな発見もあった。

今回目に付いたのは、私と遠藤の関係性の面白さ。
始めは私の水尾さん研究への障害として立ちはだかり、ゴキブリキューブを送り合うなりなんなりをしているうちに何故か打ち解け、水尾さんに恋する遠藤氏の背中を押すまでにになる。
全くもって阿呆らしいが、その分だけ愛おしい。
遠藤氏がモリミーの小説にしてはかなり珍しく普通の人である点も妙味だと思う。

あとは水尾さん自身の魅力だろうか。
私の”過去”として語られる水尾さんの発言や仕草はどこか抜けていて、それがどうしようもなく可愛らしい人物像を生んでいる。
水尾さんとの思い出が輝かしければ輝かしい程、今の私と彼女との距離の遠さが胸を刺す。
何が水尾さん研究だよ、今でも忘れられないだけじゃねぇか。

私の妄想と水尾さんの弓による浮遊感に包まれ、思い出の場所である太陽の塔にて物語は幕を閉じる。
祭りの後のような侘しさが、散々笑った小説の最後を飾るのがいいなぁ。
やっぱ傑作だわ。

 

下線部がネタバレ箇所です