立ち向かう振りの妄想癖

読んだ本の感想を雑に放ります(ミステリ多め)。超不定期更新です。

『(読んだふりしたけど)ぶっちゃけよく分からん、あの名作小説を面白く読む方法』 三宅香帆

内容(amazonより引用)

夏目漱石ドストエフスキー三島由紀夫……。有名な作家の作品の読んだふりから卒業したい人のために、注目の書評家・三宅香帆が、古今東西の名作小説を取り上げながら、「面白く小説を読む技術」を解説。あらすじを先に読む、読みやすい翻訳版を探す、タイトルからモチーフを考えるなど、ちょっとしたコツを知ることで、小説を読むことの楽しさに目覚めること間違いなし! 書き下ろし2編を追加収録した特別文庫版。

 

(読んだふりしたけど)ぶっちゃけよく分からん、あの名作小説を面白く読む方法

 

感想(ネタバレなし)

タイトルの開き直り具合に惹かれて購入したが、非常に易しく、かつ実践的な内容で良かった。

文体がゆるく、個人ブログを見ているような感覚で読み進められる一方、扱う作品は難しいイメージの小説ばかり。
カラマーゾフの兄弟』に『ドグラマグラ』、『源氏物語』。
国内外問わず、名作の数々を、”面白く読む”コツと共に紹介してくれる。

コツ自体は、当たり前のことから、学術的な読み方まで幅広く、どれも実用的。
特に「亜美ちゃんは美人」での”小さな問いを解く→大きな問いを解く”手法が鮮やかで、是非とも真似てみたいと思った。
あと、心底作品のことを好いているのが節々から感じられ、読みたくなるのも良い。

一方で、既読の作品は、解釈が異なる点が多かった。
金閣寺』の金閣=アイドル論は面白いが、それでは金閣の永遠性が失われ、溝口が凶行に及んだ動機が薄れてしまう。
それと『老人と海』の面白さが分かりにくいという評も同意しかねる。
シンプルにめっちゃ面白い作品だと感じたのだが.......。

ただ、それは飽くまで個人の考えの相違でしかないし、面白く読む方法を説く本としてはこれ以上ない程参考になる。
普段小説を読まない人、これから文学作品を読む人にとって素晴らしいガイドブックとなること間違いなしの一冊だ。

 

補足:作品を紹介する上で、ネタバレな内容も容赦なく語られるので注意されたし。

 

評価:7点

2024/3/26 読了