内容(amazonより引用)
こんな時代だからこそ心に沁みる名句がある
「孤独」や「孤立」を感じる時代だからこそ、深く心に沁みる名句がある。
漂泊・独居しながら句作を続けた“放浪の俳人”種田山頭火と尾崎放哉の自由律俳句が今、再び脚光を浴びているという。その厖大な作品の中から、現代俳句の泰斗・金子兜太が生前選んだ山頭火55句と、お笑い芸人で芥川賞作家の又吉直樹が選んだ放哉55句を合わせて110句を厳選・解説した“奇跡の共著”。
感想(ネタバレなし)
山頭火と放哉。
有名な二人の俳人が残した句を、それぞれ55句ずつ、解説を交えて載せた一冊。
まず各々の生涯について書かれるのだが、山頭火の境遇があまりにも悲惨で辛い。
十歳で母を自殺で亡くす。
井戸に見た光景の壮絶さも、それが山頭火に如何ほどの暗い影を落としたかも、想像はできない。
しかし、句を一つ一つ読むことで、彼が行乞で見た情景を追い、思いを馳せられる。
それがとにかく素晴らしかった。
放哉の句は、半分ほどは知っている句ではあるものの、又吉氏の解説が面白く、新鮮に読めた。
目の付け所の凄さなんかは、実際に自由律俳句を作っている人ならではの考え方で、なるほどなぁと感心する。
矢張り人の感想を知ることは、作品の再発見に繋がるなぁ......。
そして、二人の句を並べることにより、山頭火と放哉の共通点や相違点が見えてくるのが本書最大の魅力だろう。
異なる道を歩んだ二人が顔を合わせることは、ついぞなかった。
けれども、放哉が没した南郷庵にて、山頭火が詠んだ”鴉鳴いてわたしも一人”という句は、彼らが同じ孤独を共有した証左として、後世に亘り美しく残るのだろう。
評価:8点
2024/3/27 読了