立ち向かう振りの妄想癖

読んだ本の感想を雑に放ります(ミステリ多め)。超不定期更新です。

『推し、燃ゆ』 宇佐美りん

内容(amazonより引用)

逃避でも依存でもない、推しは私の背骨だ。アイドル上野真幸を“解釈“することに心血を注ぐあかり。ある日突然、推しが炎上し——。

 

 

感想(ネタバレなし)

※以下はネタバレ箇所を隠した感想です※

タイトルがほぼ全てを表している。
”推し”が炎上した少女のままならない日々を極めて淡々と描いた小説で、難しさはなく、サラリと読めてしまう。

しかし、平易な文体で綴られる彼女の身の上は、受け手の心が苛まれる程に重い。
学校では課題を忘れ、バイトはろくにこなせず、家にも居場所がない。
そんな辛い現実を靄で覆うようにして、”推し”について考えることに逃避する様は痛ましい。

そして、彼女の存在により浮き彫りになってくる、現代人の病理がある。
それは自分の人生に対する当事者意識の希薄さだ。
象徴的なシーンがある。
主人公のあかりが朝の占いで推しの星座だけをチェックし、自分の運勢には興味がないとして見るのをやめた場面だ。
自分に興味を持たず、駄目な部分も見ないまま、他の何かに存在価値を見出そうとする。
これは非常にアンバランスな生き方で、本に居場所を求めるような僕にも該当する、現代人が陥った深い穴だ。

やがて物語は不協和音を奏でながら、カタストロフとも呼べる最期を迎える。
しかし、彼女は最後に、あることに気づく。
おそらくあの場面から、彼女の実人生は本当の意味で幕を開けるのだと思う。

 

評価:なし(文学作品のため)

2023/12/13 読了

 

以下、ネタバレ箇所を含めた感想

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

感想(ネタバレあり)

タイトルがほぼ全てを表している。
”推し”が炎上した少女のままならない日々を極めて淡々と描いた小説で、難しさはなく、サラリと読めてしまう。

しかし、平易な文体で綴られる彼女の身の上は、受け手の心が苛まれる程に重い。
学校では課題を忘れ、バイトはろくにこなせず、家にも居場所がない。
そんな辛い現実を靄で覆うようにして、”推し”について考えることに逃避する様は痛ましい。

そして、彼女の存在により浮き彫りになってくる、現代人の病理がある。
それは自分の人生に対する当事者意識の希薄さだ。
象徴的なシーンがある。
主人公のあかりが朝の占いで推しの星座だけをチェックし、自分の運勢には興味がないとして見るのをやめた場面だ。
自分に興味を持たず、駄目な部分も見ないまま、他の何かに存在価値を見出そうとする。
これは非常にアンバランスな生き方で、本に居場所を求めるような僕にも該当する、現代人が陥った深い穴だ。

やがて物語は不協和音を奏でながら、カタストロフとも呼べる最期を迎える。
しかし、彼女は最後に、不格好な彼女自身に気づく。
おそらくあの場面から、彼女の実人生は本当の意味で幕を開けるのだと思う。

 

下線部がネタバレ箇所です