立ち向かう振りの妄想癖

読んだ本の感想を雑に放ります(ミステリ多め)。超不定期更新です。

『華氏451度』 レイ・ブラッドベリ

内容(amazonより引用)

華氏451度──この温度で書物の紙は引火し、そして燃える。451と刻印されたヘルメットをかぶり、昇火器の炎で隠匿されていた書物を焼き尽くす男たち。モンターグも自らの仕事に誇りを持つ、そうした昇火士(ファイアマン)のひとりだった。だがある晩、風変わりな少女とであってから、彼の人生は劇的に変わってゆく……本が忌むべき禁制品となった未来を舞台に、SF界きっての抒情詩人が現代文明を鋭く風刺した不朽の名作、新訳で登場

 

 

感想(ネタバレなし)

5年程前、『1984年』で痛い目に遭って以来、ディストピア小説がトラウマになっていた。
その為、似た立ち位置の本作もあまり期待せず読んだわけだが......面白かった。

まず、ディストピア小説としての先見性が非常に高い。
民衆が短時間で手軽に楽しめるものを求め、考える能力が衰えてしまうというのは現在進行形の問題だと思うし、まんまファスト映画の出現を予言しているようなセリフもあって、驚いた。

しかし、僕が好きなのは風刺描写ではなく、その先に見える本への情熱だ。
幸せな世界で何かが足りないと気づき、本に答えを求めるモンターグ。
彼の視点を通すことで、本を読む価値が再定義されていくのが素晴らしい。
悪役にあたるはずのベイティもどこか魅力的で、読んでいて嫌な感じがしなかった。

後半に入り、逃避劇に移り変わってからがドライブ感マシマシで、詩的表現の妙もあり、とにかく熱い。
終わり方含め、著者の前向きな熱さがしっかりと伝わってきて良かった。

鋭い風刺と大きな熱量が同居した、名作と呼ばれるのも頷ける作品でした。
こういうディストピア小説なら大歓迎だなぁー。

 

評価:8点

2023/12/9 読了