立ち向かう振りの妄想癖

読んだ本の感想を雑に放ります(ミステリ多め)。超不定期更新です。

『あの日の交換日記』 辻堂ゆめ

内容(中央公論新社公式サイトより引用)

交換日記、全部読みました。そして、思い出しました。嘘、殺人予告、そして告白……。大切な人のため綴った日記に秘められた真実とは?

 

 

感想(ネタバレなし)

教師と児童、母と息子のように、様々な関係のふたりが交換日記を介して心を通わせる連作短編集。

第一話から重い病を患った女の子の日々がリアルに描かれ、胸が苦しかった。
その不自由さがある故に、交換日記という存在が、彼女の大きな支えになっているのが良い。
物語に入り込み、純粋に治ってほしいと願ったところで、とある趣向が明かされ度肝を抜かれた。
......やるじゃない。

お初の作者だが、丹念な人間描写と冴えたトリック、そして最後に希望を示す作風は辻村深月を彷彿した。
中でも「加害者と被害者」は伏線の張り方が巧みすぎて、あまり注視していなかった己を恥じた。

最終回も凄い。
全話にまたがる趣向を明かし、全てが線で結ばれ、一つの関係に閉じていく。
見事というほかない。

手練手管が凝らされた秀逸なミステリでもあり、人のやさしさに満ちたハートウォーミングな物語でもある。
子どもから大人まで幅広く読まれてほしい作品だった。

とある理由で親近感も湧いたので、今後は贔屓の作家にしたい。一部地域の人が親しみを持つ名前だよね。

 

評価:8点

2024/1/11 読了