立ち向かう振りの妄想癖

読んだ本の感想を雑に放ります(ミステリ多め)。超不定期更新です。

『ミステリー・オーバードーズ』 白井智之

内容(amazonより引用)

探偵たちの集まった館で殺人事件が起きた。その晩、探偵たちの口にしたワインに幻覚剤が混入していたことで、事件は思わぬ方向へ転がっていく……。(ディテクティブ・オーバ―ドーズ)ほか“食”をテーマにした全5篇を収録。異世界転生からエログロ、本格ミステリーまで、唯一無二のミステリー作家・白井智之が美味しく調理した短編集。

 

 

感想(ネタバレなし)

白井智之は作風が本当にブレない。
トチ狂った世界観に異常な展開、そしてロジックへの偏執。
どれをとってもおかしい。

そのスタイルが色濃く出ているのが「げろがげり、げりがげろ」。
もうタイトルの時点で嫌な予感がプンプン漂っているし、案の定中身は最悪。
口と肛門が入れ替わった世界に転生するという、羨ましさの欠片もない悪夢のような異世界譚に、読者は食欲を失くすこと請け合い。
しかし歴とした本ミスであることは間違いなく、この趣向を活かし切った多重解決は歯ごたえ抜群。
「そりゃねぇだろ!」って言いたくなるようなトリックもあるんだけど、笑ったから許せちゃう。

「ディテクティブ・オーバードーズ」はエログロこそ控えめではあるものの、やはりイカレている。
探偵たちのラリッた手記が見どころで、その支離滅裂さに終始声を出して笑ってしまった。
これを素面で書いている人類が現世に存在するという事実に戦慄を禁じえないが、サイケな記述から堅牢なロジックを積み上げていく推理こそ、驚異そのものだ。

これらを”食をテーマにした短編集”と銘打っているのは明らかに食への冒涜だし、決して人に勧められない。
それでもやめられず、白井智之の作品に手を伸ばしてしまうアナタは、私と同じ、立派な中毒者でしょう。

 

評価:8点

2024/1/13 読了