立ち向かう振りの妄想癖

読んだ本の感想を雑に放ります(ミステリ多め)。超不定期更新です。

『invert II 覗き窓の死角』 相沢沙呼

内容(amazonより引用)

嵐の山荘に潜む若き犯罪者。そして翡翠をアリバイ証人に仕立て上げる写真家。犯人たちが仕掛けた巧妙なトリックに対するのは、すべてを見通す城塚翡翠。だが、挑むような表情の翡翠の目には涙が浮かぶ。その理由とはーー。ミステリランキング5冠『medium 霊媒探偵城塚翡翠』、発売即重版10万部『invert 城塚翡翠倒叙集』に続く待望の第3作目。犯人視点で描かれる倒叙ミステリの金字塔!

 

 

注意:本作は『medium 霊媒探偵城塚翡翠』を読んでいることを前提としています。そのため、『medium~』を先に読むことを強く推奨します。

 

感想(ネタバレなし)

ゴールデン帯でドラマ化もされ、絶好調のシリーズ3段目。

収録されている中編2作は両方とも前作同様の倒叙ミステリ。この方式で、どれだけミステリ的旨味を引き出せるかチャレンジしていて、どちらも読み応えのある仕上がりになっている。

前編は事件が起きた嵐の山荘に探偵が迷い込む......というよくあるシチュエーションから何故か少年とお姉さんのちょっとHなドタバタギャグコメディが展開されて謎。
視点人物である少年の地の文がイタくて読んでいて辛かったが、ミステリとしては勿論良い出来栄え。

後編はミステリ以前に物語として素晴らしい。
シリーズ通して浮世離れしていて、何となく親しみづらかった翡翠の素の部分が見え、人物としての魅力が大きく増している。
(ワトソン役を抜いて)初めてできた友人を追い詰めなくてはならない状況で発露する、探偵の弱さと強さ。これこそ本ミスでしか描けない人間模様だろう。

キャラクターも増え、翡翠の過去を匂わせる描写があったりと、シリーズの縦軸が見え始めてきたので今後がより楽しみ。

 

評価:7点

2023/4/29 読了