立ち向かう振りの妄想癖

読んだ本の感想を雑に放ります(ミステリ多め)。超不定期更新です。

『春期限定いちごタルト事件』 米澤穂信

内容(amazonより引用)

小鳩君と小佐内さんは、恋愛関係にも依存関係にもないが互恵関係にある高校1年生。きょうも2人は手に手を取って清く慎ましい小市民を目指す。それなのに、2人の前には頻繁に謎が現れる。名探偵面などして目立ちたくないのに、なぜか謎を解く必要に駆られてしまう小鳩君は、果たしてあの小市民の星をつかみとることができるのか? 新鋭が放つライトな探偵物語、文庫書き下ろし

 

 

感想(ネタバレなし)

※以下はネタバレ箇所を隠した感想です※

名前は聞いたことのあった小市民シリーズに入門。

「小市民を目指す」という目標を掲げる小鳩君と小佐内さんの関係が物珍しく面白い。

ミステリ面に関しては、THE日常の謎といった趣で、小さな謎がささやかに解かれる。
オーソドックスと言ってしまえばそれまでだが、2004年時点でここまで日常ミステリのひな型を固めていることが驚異である。

「For your eyes only」は同じ2つの絵画がなぜ作られたのかという謎が魅力的。
ビターな終わり方に著者の持つ黒い側面が覗ける。

短いながら秀逸なのが「おいしいココアの作り方」。
頭の体操的な論理問題でありつつ、正解は盲点をつくもので上手い。
”おいしい”に意味を持たせるのもオシャレで好き。

そして終話の「孤狼の心」なのだがこれはロジックが面白かった。
見返してみれば○○になっていて見事。

とぼけたユーモアに小さな謎、そこにしっかりとした推理。
米澤氏の抜群のセンスが静かに、しかし確かに光る一作だった。
続きも読みます。

 

評価:6点

2022/12/28 読了

 

以下、ネタバレ箇所を含めた感想

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

感想(ネタバレあり)

名前は聞いたことのあった小市民シリーズに入門。

「小市民を目指す」という目標を掲げる小鳩君と小佐内さんの関係が物珍しく面白い。

ミステリ面に関しては、THE日常の謎といった趣で、小さな謎がささやかに解かれる。
オーソドックスと言ってしまえばそれまでだが、2004年時点でここまで日常ミステリのひな型を固めていることが驚異である。

「For your eyes only」は同じ2つの絵画がなぜ作られたのかという謎が魅力的。
ビターな終わり方に著者の持つ黒い側面が覗ける。

短いながら秀逸なのが「おいしいココアの作り方」。
頭の体操的な論理問題でありつつ、正解は盲点をつくもので上手い。
”おいしい”に意味を持たせるのもオシャレで好き。

そして終話の「孤狼の心」なのだがこれはロジックが面白かった。
見返してみれば1話のタイトルと対になっていて見事。

とぼけたユーモアに小さな謎、そこにしっかりとした推理。
米澤氏の抜群のセンスが静かに、しかし確かに光る一作だった。
続きも読みます。

 

下線部がネタバレ箇所です