内容(amazonより引用)
上場企業『ザイゼン』の社長財前彰太は、妻の由布子、娘の美華と三人で幸福に暮らしていた。ところが、世間を騒がす女性拉致事件のニュースを見かけ、彰太の心に不安が兆す。その快楽殺人者の手口に覚えがあったのだ。十八年前、反対を押し切って由布子と結婚するため、そして伯父の会社を奪うため、彰太はある〝罪〞を犯した……。
人間の悪と因果を暴く衝撃のミステリー!
感想(ネタバレなし)
サスペンスミステリとしてかなりクオリティの高い良作。
序盤では裕福な暮らしをする一家に徐々に影が差すという不穏な変化が描かれる。章題を各章の文に組み込む方式も、章題の印象をひき立てていて効果的に機能している。
バレエや仏教等、様々な雑学が引用されるあたりに著者の年輪を感じる。デビューは割と最近だけどね。
終盤で種明かしが始まるのだが、これがまあ強烈である。
舞台の裏で張り巡らされていた数々の悪意や業が連鎖的に明かされる。
その様はまさに地獄。
まるでドラゴンボールのように悪人度合いがインフレしていって、終盤は逆に笑えてきた程。
さらに目を見張る真相に巧みな伏線とミステリに求められる要素もふんだんに詰まっていて満足度が高い。
ラストシーンこそ「え、そこ?」とやや困惑したが、全く予想がつかなかったのも事実である。
人間の業の深さを再確認する、厚みのあるミステリだった。
評価:8点
2022/12/19 読了