内容(amazonより引用)
「この猫が怖くてたまらない」
おとなしい動物愛好家の「私」は、酒に溺れすっかり人が変わり、可愛がっていた黒猫を虐め殺してしまう。やがて妻も手にかけ、遺体を地下室に隠すが…。戦慄の復讐譚「黒猫」他「アッシャー家の崩壊」「ウィリアム・ウィルソン」「赤き死の仮面」といった傑作ゴシックホラーや代表的詩「大鴉」など14編を収録。英米文学研究の第一人者である訳者による解説やポー人物伝、年譜も掲載。
あらゆる文学を進化させた、世紀の天才ポーの怪異の世界を堪能できる新訳・傑作選!
感想(ネタバレなし)
恥ずかしながら読んだことのなかったポーに入門。
まず訳が自然で、海外小説に不慣れな人間にもやさしい。
舞台や題材から200年前という時代の隔たりは当然感じられるものの、各話の出来に古臭さはない。
冒頭、「赤き仮面の死」は、タイトルで想像できる現実のある病をモチーフとしたスリラー。
結末が実に耽美で、それまでピンと来ていなかった”ゴシックホラー”というジャンルへの理解が大幅に進んだ気がする。
また、代表作「大鴉」は詩であるものの、物語性が強いので、しっかり短編集の中に溶け込んでいる。
押韻を重視した原文に則っているらしく、声に出して読むと心地がいい。それと同時に、地の底のような暗さをベースに重ねられる「ありはせぬ」がカッコよすぎて、多感な時期に読んだら色々拗らせられただろうなぁ、と安堵するような、残念のような複雑な気持ちになった。
ともかく、精神の裏にある恐れを軸とした、良いホラー短編集だった。
巻末で語られるポーの人格破綻っぷりが一番ホラーなのは内緒だよ。
評価:7点
2024/2/9 読了