立ち向かう振りの妄想癖

読んだ本の感想を雑に放ります(ミステリ多め)。超不定期更新です。

『地の糧』 ジッド (再読)

内容(amazonより引用)

君はすっかり読んでしまったら、この本を捨ててくれ給え。そして外へ出給え——。語り手は、青年ナタナエルに語りかける。「善か悪か懸念せずに愛すること」「賢者とはよろずのことに驚嘆する人を言う」「未来のうちに過去を再現しようと努めてはならぬ」。二十代のジッドが綴った本書は、欲望を肯定し情熱的に生きることを賛美する言葉の宝庫である。若者らの魂を揺さぶり続ける青春の書。

 

 

感想(ネタバレなし)

内容理解を深める為に再読。
相も変わらず分からぬ部分が多かったが、初読時と比べ大分咀嚼できたように思う。

ナタナエルは矢張り読者を指した言葉で、終始筆者であるジッドは読み手に自然の豊かさを記し、本の中に生まれない各自が持った感覚の重要性を訴えているのだろう。

『地の糧』が書かれたのは100年以上前であり、スマホは当然のこと、テレビもない。
故に己の足を動かして各地に赴き、自らの目で見なければ真実は分からなかったはずだ。

ジッドは濃醇な筆致で、旅先の花や建造物をスケッチする。当時の読者はそれに魅入られ、アマルフィの月浮かぶ海や、マルタの美しい庭園に思いを馳せたに違いない。
そして、最後のページでジッドから「私の本を棄ててくれ」という言葉を囁かれ、本を閉じたその手で玄関の扉を開き、街へ出る。
そこには片手だけで花の見た目から開花時期まで調べられる現代人には及びもつかない情熱が、確かにあったのだと思う。

 

評価:なし(文学作品のため)

2024/2/11 読了