立ち向かう振りの妄想癖

読んだ本の感想を雑に放ります(ミステリ多め)。超不定期更新です。

『嚙みあわない会話と、ある過去について』 辻村美月

内容(amazonより引用)

大学の部活で仲のよかった男友達のナベちゃんが結婚するという。だが、紹介された婚約者はどこかズレていて――。
「ナベちゃんのヨメ」

国民的アイドルになったかつての教え子がやってくる。小学校教諭の美穂は、ある特別な思い出を胸に再会を喜ぶが……。「パッとしない子」

人の心裏を鋭くあばく傑作短編集!

 

 

感想(ネタバレなし)

負の辻村節、全開。
徹頭徹尾人間の身勝手さが露悪的に描かれる。

「ナベちゃんのヨメ」で浮き彫りになるのは人の無責任さ。
かつての同級生の結婚相手がヤバい人だと騒ぎ立て、憐れみの的とする。その一因が自分たちにもあることにすら気づかずに。

「パッとしない子」は、人気アイドルが母校を訪れるという和やかな導入から、会話内容のギャップで胃が痛くなった。
先生のしたことは、世間的に大きな問題になるような行為ではない。
しかし、児童という多感な存在に陰を落とすには十分すぎる。
とあることを突きつける最後の展開は、下手なホラーよりも怖い。

私的に一番刺さったのが「ママ・はは」。
真面目を盲信する人は義務が得意で贅沢や娯楽が苦手という言葉に、体を貫かれるようだった。僕は真面目系クズだから義務も苦手だけど。
あと途中で急にファンタジー的な話になるのは流石にツッコみたい。リアリティライン激落ちくんか?

正直、読んでいて楽しくはない。
しかしながら、僕らが如何に過去を都合よく忘れ、記憶を書き換えているかを気づかされ、打ちのめされる。
この自覚こそが大切なのだと思う。

 

評価:6点

2023/9/11 読了