立ち向かう振りの妄想癖

読んだ本の感想を雑に放ります(ミステリ多め)。超不定期更新です。

『機龍警察 暗黒市場』 月村了衛

内容(amazonより引用)

元ロシア警官のユーリ・オズノフ警部は、警視庁特捜部との契約を解除され武器密売に手を染めた。そんな中特捜部は、近々ロシアマフィアによる有人搭乗兵器の見本市が行われることを察知するが……。

 

感想(ネタバレなし)

シリーズ3作目にして脂が乗りに乗っている。
前々作の姿、前作のライザに続き、ユーリの過去にスポットが当たるが、これがまた壮絶。
警察としての誇りと国の腐敗。巨大な権力により運命を翻弄され続けるユーリが不憫でならなかった。

しかし、そこで終わらず、読者の見たいものを見せてくれるのがこのシリーズの素晴らしいところ。
後半から怒涛の展開で息つく暇も与えない。
特に地下でのバトルは余りにも熱すぎて、ずっと気持ち悪い笑みを浮かべながら読んでいた。
多分このシチュエーションを嫌いな人は存在しない。

ユーリの宿敵であるゾロトフとの因縁も一言で語れない愛憎が籠っていて、ウテナの脚本を書いていただけあるなぁと思わせられる。

そして、陰惨な過去を乗り越えて、ユーリが警察としての誇りを再び取り戻していく心の動きに、胸が熱くなる。
元々高かったユーリへの好感度が本作で大気圏まで急上昇した。

やや期待が大きすぎた感もあるが、壮大なスペクタクルで重厚な人間ドラマが繰り広げられる、最高のエンタメ小説だった。

 

評価:9点

2023/9/19 読了