内容(amazonより引用)
嵐の私雨邸に取り残された11人の男女。
資産家のオーナーは密室で刺殺され、世にも珍しい〈探偵不在〉のクローズド・サークルが始まる。
館に集ったのは怪しい人物ばかり。いったい誰が犯人を当てるのか。各人の視点からなされる推理の先に、思わぬ悲劇が待っている。
感想(ネタバレなし)
お初の作家のミステリだったが、かなり良かった。
大筋としては極めて王道的。
曰く付きの館で裏がありそうな面子が集まり、交通・通信手段が絶たれて、殺人が起きる。
言ってしまえばありきたりで、何なら登場人物にそれを指摘させている。
なのだが、その魅せ方がとにかく巧い。
タイトルにもある通り、複数のキャラに視点を転々と移すため退屈しないし、各節の末尾にメタ的な視点で読者にヒントや事実を与えることによりミステリとしての盛り上がりを演出してくれる。
そして解決編は宣伝通り探偵がいないというシチュエーションを大いに利用した趣向になっていて、純粋に楽しい。
と、ミステリ面が充実する中で、それぞれの”視点”をテーマとした人間描写も光っている。
特に犯人の動機や物語の締め方は、人間が如何に視点に縛られているかを暴き出していて心に残る。
ミステリとしても、テーマを持った小説としても良くできた作品だった。
評価:8点
2023/11/5 読了