内容(amazonより引用)
・命を絶った青年が残したという一冊の句集。元教師の俳人・作田慮男は教え子の依頼で一つ一つの句を解釈していくのだが、やがて、そこに隠された恐るべき秘密が浮かび上がっていく。(「皐月闇」)
・巨大な遊廓で、奇妙な花魁たちと遊ぶ夢を見る男、木下美武。高名な修験者によれば、その夢に隠された謎を解かなければ命が危ないという。そして、夢の中の遊廓の様子もだんだんとおどろおどろしくなっていき……。(「ぼくとう奇譚」)
・朝、起床した杉平進也が目にしたのは、広い庭を埋め尽くす色とりどりの見知らぬキノコだった。輪を描き群生するキノコは、刈り取っても次の日には再生し、杉平家を埋め尽くしていく。キノコの生え方にある規則性を見いだした杉平は、この事態に何者かの意図を感じ取るのだが……。(「くさびら」)想像を絶する恐怖と緻密な謎解きが読者を圧倒する三編を収録した、貴志祐介真骨頂の中編集。
感想(ネタバレなし)
※以下はネタバレ箇所を隠した感想です※
貴志祐介の作品では(全部読んでいる訳ではないが)一番本格ミステリに近いと感じた。
梅雨の名を冠しているだけあって、どれもジメっとしていて薄暗い話だが、キレ味は鋭い。
「皐月闇」は句集を基に、一つ一つの俳句から、裏で起こっている出来事を推理するというプロットがまず面白い。
やや無理のある点も多いが、伏線の張られたどんでん返しもあり、かなりの力作。
間の「ぼくとう奇譚」は一転してオカルト要素濃い目の時代モノ。
呪いをかけられ、夢の中まで何者かに侵略されるというシチュエーションはホラーなのに、その場が妖艶な遊郭なのが不気味で良かった。
ラストはちょっとシュール。
最後の「くさびら」が傑作。
実体のない幻覚のきのこが中心で、前の二作と似通った本筋だったので、あぁまたかと高を括っていたら度肝を抜かれた。
完全にしてやられた。やるじゃない(ニコ)。
評価:7点
2024/6/22 読了
以下、ネタバレ箇所を含めた感想
感想(ネタバレあり)
貴志祐介の作品では(全部読んでいる訳ではないが)一番本格ミステリに近いと感じた。
梅雨の名を冠しているだけあって、どれもジメっとしていて薄暗い話だが、キレ味は鋭い。
「皐月闇」は句集を基に、一つ一つの俳句から、裏で起こっている出来事を推理するというプロットがまず面白い。
やや無理のある点も多いが、伏線の張られたどんでん返しもあり、かなりの力作。
間の「ぼくとう奇譚」は一転してオカルト要素濃い目の時代モノ。
呪いをかけられ、夢の中まで何者かに侵略されるというシチュエーションはホラーなのに、その場が妖艶な遊郭なのが不気味で良かった。
ラストはちょっとシュール。
最後の「くさびら」が傑作。
実体のない幻覚のきのこが中心で、前の二作と似通った本筋だったので、あぁまたかと高を括っていたら度肝を抜かれた。
それまでは主人公が所謂信頼できない語り手だったので、今回もそのパターンか......と思わせておいてきのこが見えない鶴田の方が異常である逆叙述トリックだったとは。
完全にしてやられた。やるじゃない(ニコ)。