立ち向かう振りの妄想癖

読んだ本の感想を雑に放ります(ミステリ多め)。超不定期更新です。

『青い春を数えて』 武田綾乃

内容(amazonより引用)

“青春”の表も裏もすべて抱えて、少女は大人になっていく。

放送部の知咲は、本番の舞台にトラウマがある。だが、エースの有紗の様子が変で――(白線と一歩)。
怒られることが怖い優等生の細谷と、滅多に学校に来ない噂の不良少女・清水。正反対の二人の逃避行の結末は(漠然と五体)。

少女と大人の狭間で揺れ動く5人の高校生。瑞々しくも切実な感情を切り取った連作短編集。

 

 

感想(ネタバレなし)

女子高生という、自分と対極の華やかな舞台で生きる主人公たちにこれだけ深い共感を覚えるとは思ってもみなかった。

各話でそれぞれ異なる悩みが中心となるのだが、その全てが身に覚えのあるもので、他人事ではない切実さがあった。

「赤点と二万」の話なんか似通いすぎてて色々フラッシュバックしてしまう。
高くも低くもない中途半端な学力の自称進学校描写がリアルすぎる。
その上、”推薦はズルい”とか”受験で使う科目以外無駄”とか、確実にあの頃の自分も考えていたようなことを主人公が言うので、「俺じゃん」と思わずにいられない。

青春とは言うが、その色は華やかとは限らず、雑多な色が人の数だけ存在する。
狭い空間に押し込められた憂鬱が、複雑な輝きを放つのだ。

ラストの「漫然と五体」はその教室という檻を離れ、二人の少女が心を通わし、つかの間の自由を得る話だ。
清水と細谷、性格も、持っている悩みも、学校での立場も違う彼女たちが、互いに寄り添う姿に、青春の儚い美しさが詰まっている。

きっと悩みに大きい小さいもなく、彼女たちは皆、冷え切るような今を、凛として生きていくのだろう。

 

評価:8点

2024/6/14 読了