内容(amazonより引用)
かつて小学校の校長だった切れ者の祖父は現在、幻視や記憶障害といった症状が現れるレビー小体型認知症を患い、介護を受けながら暮らしていた。
しかし、孫娘の楓が身の回りで生じた謎について話して聞かせると、祖父の知性は生き生きと働きを取り戻す。
そんな祖父のもとへ相談を持ち込む楓だったが、やがて自らの人生に関わる重大な事件が……。
古典作品が彩る安楽椅子探偵ミステリー!
感想(ネタバレなし)
設定自体は一風変わっているが、中身は極めて王道のミステリ。
日常の謎に始まり、密室や人間消失とミステリ好きにはおなじみのものが並び、頬が緩む。
古典作品の名が頻繁に顔を出すのも特筆すべき点で、僕みたいな歴の浅いミステリファンとは比べ物にならない知識と思い入れの深さが窺える。
対してトリックやロジックはまずまずといったところで、それほど驚く点はなかったか。
「プールの”人間消失”」は完全に盲点を突くトリックにしてやられたが、それ以外は何処か蓋然性に乏しく、今ひとつピンとこないものが多かった。
それでも良い作品だと感じたのは、偏に名探偵である祖父を中心としたキャラクターの魅力のおかげである。
認知症を患い、恍惚の人になりかけながらも、かつての穏やかさとキレのある頭脳は失わない。
最終話の活躍には痺れたし、”名探偵のままでいて”というタイトルの重みが違ったものになるのも良い。
安定感のある良作で映像化にも向いているので、近い将来確実にドラマ化されると予言しておこう。
評価:7点
2024/6/11 読了