立ち向かう振りの妄想癖

読んだ本の感想を雑に放ります(ミステリ多め)。超不定期更新です。

『もういちど生まれる』 朝井リョウ

内容(amazonより引用)

バイトを次々と替える翔多。美人の姉が大嫌いな双子の妹・梢。才能に限界を感じながらもダンスを続ける遥。若者だけが感受できる世界の輝きに満ちた、背中を押される爽快な青春小説。

 

 

感想(ネタバレなし)

超有名作家の作品を今更初体験。
読んでみれば高く評価されるのも納得の出来である。

まず、群像劇の描き方が見事だ。
前の話に出てきた人物の視点が後になって語られ、どんどん輪が広がる。群像劇のお手本と言える綺麗な構成。

そして本作は紛れまない、現実を生きる青春小説だろう。
初めの2編は、言ってしまえば非常に一般的な大学生たちの物語だ。
バイトに恋、飲み会に合宿、およそ大学生らしい生活を送っていない自分には縁遠い世界だが、そんな中にある霧のように不確かな悩みには共感できる。

一方、終盤になるにつれ、大学を離れて苦悩や劣等の色が濃くなり、個人的には共感しやすかった。
特に表題作は、同じ浪人生活を送ってきた身として痛いほどシンパシーを覚えた。
それだけに、美しい終わり方が心に残る。

 

評価:6点

2022/12/2 読了