立ち向かう振りの妄想癖

読んだ本の感想を雑に放ります(ミステリ多め)。超不定期更新です。

『沈みかけの船より愛をこめて』 乙一ほか

内容(amazonより引用)

破綻しかけた家庭の中で、親を選択することを強いられる子どもたちの受難と驚くべき結末を描いた表題作ほか、「時間跳躍機構」を用いて時間軸移動をくり返す驚愕の物語「地球に磔(はりつけ)にされた男」など全11編、奇想と叙情、バラエティーにあふれた「ひとり」アンソロジー

 

 

感想(ネタバレなし)

まさかの「ひとり」アンソロジー第2弾。今回は乙一名義が多めで、山白名義が一作のみと偏りがある。まあ同一人物なんだがな!超良質な作品集だった前作(?)に比べ、今回はやや小粒な感が否めない。とはいえどの作品も一定以上のクオリティは満たされているので、短編集としては十分に楽しめた。

「パン、買ってこい」は中田永一らしいオフビートなユーモアがさく裂した一作。”パシリを極める”という本筋のくだらなさに読んでいてニヤニヤさせられた。謎に爽やかな終わり方も好み。
「地球に磔にされた男」は”タイムマシンもの”というよりは”平行世界もの”で、別の世界線の自分に合うというシチュエーションがまず魅力的。着地点を読めない所も上手く、終盤に向けての展開はとても心に残った。
表題作も素晴らしい。離婚のため、子供が父か母を選ぶ話と聞けば悲しい展開を想像するだろうし、現にそうではあるのだが、タイトル通り愛に溢れている面もあり、割り切れない良さがある。

良い短編集ではあった......。それはそれとして山白朝子の新作もっと読みてぇ!

 

評価:7点

2022/11/24