『無垢なる花たちのためのユートピア』 川野芽生
内容(amazonより引用)
純粋無垢な少年たちとその指導者を乗せ、天空をゆく船。最も楽園に近いはずの船上で起きた悲劇と、明らかになる真実とは(「無垢なる花たちのためのユートピア」)。人間が人形へと変化してしまう病が流行った村で、ひとり人間のままの姿で救出された少女は、司祭のもとで手厚く看病される。しかし怪我が癒え、うつくしさを取り戻した少女は限りなく人形に近づいているようで……(「人形街」)。歌人・小説家川野芽生の初小説集、待望の文庫化。
感想(ネタバレなし)
芥川賞の候補に著作が選ばれ、マルチな分野で才能を見せる作者の、初の小説集.......らしい。何も調べず、直感で選んだので情報がなかったのだが、ジャンルとしてはSF・幻想小説にあたるか。
世界観が難しく、理解できる話と理解できない話が半分半分だった。
表題作は比較的理解しやすい。
楽園に辿り着くために、”先生”から選ばれた”花”たち。
悪徳が排除されたある種の密室で人が死ぬという、変わり種のミステリとしても楽しめる。
最初と最後の間の3作は、はっきり言ってよく分からん。
何となくの雰囲気は伝わるのだが、もっと説明してほしいというのは野暮だろうか?
まあ野暮か。
「卒業の終わり」は素晴らしかった。
主人公と距離の近い友人、雨椿と、あまり言葉を交わさないクラスメイトの、月魚の間で、友情に思い悩むという極めてミニマルでリアリティのある話から、じわじわと残酷な世界が顔を出すというスケールの移り変わりが良かった。
ただ不条理なものを描くだけで終わらないのも好き。
気高く美しい短編集だった。
評価:なし(文学作品のため)
2025/2/25 読了
