立ち向かう振りの妄想癖

読んだ本の感想を雑に放ります(ミステリ多め)。超不定期更新です。

『ペッパーズ・ゴースト』 伊坂幸太郎

内容(amazonより引用)

中学教師の檀は、猫を愛する妙な二人組の小説原稿を生徒から渡される。さらに他人の未来を観る力を持つことから謎の集団とも関わり始め……。苦い過去を乗り越えて檀先生は、世界を、自分を救えるのか!? 毎ページすべてが楽しく愛おしい、一大エンターテイメント!《解説・大矢博子》

 

 

感想(ネタバレなし)

久々の伊坂小説。
冒頭から猫のマークの章題が目に入り、「これこれぇ!」とテンション上がらずを得ない。

内容も期待通りのもので、アクの強いキャラたちによる掛け合いと、伏線回収の数々を楽しめる。
中でも、タイトル回収をする中盤のある展開が驚愕で、久々にトリックに対して声が出た。
めちゃくちゃ力業だし、正直無理ありまくりなんだけど、俺は好きだよ......こういうの。

そんな小説としての楽しさが詰まっている一方、テーマは暗く根深い。
ニーチェ永劫回帰を引用し、つらい過去を抱えた人々の心情を、真っ向から描き切っている。

分かりやすい答えはなく、結末も良いものと言えるかは、果たして怪しい。
しかし、それ故に現実にも通用するような説得力が、この童話のようなフィクションに宿ると感じられるのだ。

終わりの数ページも、この作家にしかできないような締め方で、やっぱり痺れる。
実に伊坂らしい小説で、とっても満足した。

 

評価:7点

2025/2/9 読了