立ち向かう振りの妄想癖

読んだ本の感想を雑に放ります(ミステリ多め)。超不定期更新です。

『ジヴェルニーの食卓』 原田マハ

内容(amazonより引用)

印象派の巨匠4人の美の謎を色鮮やかに描き出した短編集。
モネ、マティスドガセザンヌという4人の印象派の巨匠たちの、創作の秘密と人生を鮮やかに切り取った短編集。ジヴェルニーに移り住み、青空の下で庭の風景を描き続けたクロード・モネ。その傍には義理の娘、ブランシュがいた。身を持ち崩したパトロン一家を引き取り、制作を続けた彼の目には何が映っていたのか。(「ジヴェルニーの食卓」)
語り手は画家の身近にいた女性たち。美術史や評伝から見えてこない画家の素顔や心情が、キュレーターの経験がある作家の想像力によって色鮮やかによみがえる。

 

 

感想(ネタバレなし)

十九世紀から、二十世紀初頭のフランスを舞台に、実在の有名画家をその周囲の人物から描いた短編集。
当方芸術について完全に無学であるが、そこは流石の原田マハ
名前程度しか知らない画家たちをとても魅力的に映してくれる。

「うつくしい庭」はアンリマティスの晩年に仕えた使用人が主人公。
マティスの身近にいる歓びが、鮮やかな筆遣いで紡がれる。
あのピカソとの交遊も描かれ、二人の作風の違いや、深い友情が窺える。

「タンギ―爺さん」は、一風変わった作品。
画材屋の店主”タンギー爺さん”の娘がセザンヌに手紙の形式を採っている。
当時立ち上がったばかりの印象派の画家たちが、彼らを支えるタンギー爺さんに強い親しみを持って接する様子がなんともほほえましい。
終わり方も切なく、史実ではどうなったかが気になる。

「ジヴェルニーの食卓」は、老境に入り衰えたモネが、それでもキャンバスに向かう姿が胸を打つ。

異国の、それも百年も昔の画家たちに、思いを馳せたくなる短編集だった。

 

評価:6点

2025/2/3