立ち向かう振りの妄想癖

読んだ本の感想を雑に放ります(ミステリ多め)。超不定期更新です。

『ぼくは化け物君は怪物』 白井智之

内容(amazonより引用)

本格ミステリ・ベスト10」2年連続1位! ランキングを席巻する鬼才の最新短編集! クラスメイト襲撃事件を捜査する小学校の名探偵。滅亡に瀕した人類に命運を託された“怪物”。郭町の連続毒殺事件に巻き込まれた遊女。異星生物のバラバラ死体を掘り起こした三人組。見世物小屋(フリークショー)の怪事件を予言した“天使の子”。凶暴な奇想に潜む、無垢な衝動があなたを突き刺す。白井智之は容赦しない。

 

ぼくは化け物君は怪物(amazon)

 

感想(ネタバレなし)

光文社から出版されたものとしては三作目となる白井智之の短編集。
その中だと表紙が過去一悍ましいが、作風は『少女を~』『ミステリー』に比べ、はるかにマイルド。てか、過去の二つがエグすぎ。
少女がミキサーに入れられたり、フナムシを食べたりしない本作でも、著者の武器である奇抜な発想と精緻なロジックは健在だ。

「奈々子の中で死んだ男」は、色街の風俗を細かく描いた力作。
街のしきたりや人物描写の一つ一つが伏線として拾われていく様が気持ち良い。
ラストはこれだけのディティールで街一つを作り上げた故の絶望的な余韻があり、溜め息が漏れてしまう。

「モーティリアンの手首」は、アイデアもさることながら、それに終わらぬ推理合戦が凄まじい。
この設定で動機がメインになるのが、また面白いと思う。

そして何より書下ろしの「天使と怪物」がまぁ素晴らしかった。
お得意のアレにさらに磨きがかかっていて、短編と思えぬ数の驚きがあった。
さらにこの作品に至っては動機の描き方まで完璧。
まさか白井智之作品でこれだけ切ない読後感を味わえるとは思わなかった。

グロが苦手な人には、「いけにえ」の次にこれを勧めたい。

 

評価:8点

2024/12/22 読了