『晩年』 太宰治
内容(amazonより引用)
太宰文学の可能性の萌芽がすべて収められた、第一創作集
妻の裏切りを知らされ、共産主義運動から脱落し、心中から生き残った著者が、自殺を前提に遺書のつもりで書き綴った処女作品集。“撰ばれてあることの 慌惚と不安 と二つわれにあり"というヴェルレーヌのエピグラフで始まる『葉』以下、自己の幼・少年時代を感受性豊かに描いた処女作『思い出』、心中事件前後の内面を前衛的手法で告白した『道化の華』など15編より成る。
感想(ネタバレなし)
彼の太宰治のデビュー短編集ということで、文学的作品からコメディタッチの短編、断片のような掌編まで、バラエティ豊かな物語を味わえる。
文学寄りの作品は、正直に言うと難解で、よく分からない。
「思い出」や「列車」などは、かなり著者の実体験に近いらしい。
その中にある意図を汲み取るのは難しいが、何となく周りに馴染めない人間の諦観のようなものを、底に感じる。
喜劇的な作品に関しては、寧ろ読み手を楽しませることに全力を尽くしている。
「猿面冠者」は再読だが、やはりその自己の羞恥を笑いにまで昇華しようとする姿勢が好ましい。
「道化の華」は、そんな「猿面冠者」に近い一編で、こちらも好みだった。
心中騒動後の太宰本人を描きつつも、常にメタ的な視点で自嘲し、罵倒し続けるという形式がかなり変則的で面白い。
終わり方がまた凝りに凝っていて、実にひねくれた余韻があり、よろしい。
太宰治という作家のエッセンスがぎゅっとつまった短編集だった。
評価:なし(文学作品のため)
2024/12/6 読了
