立ち向かう振りの妄想癖

読んだ本の感想を雑に放ります(ミステリ多め)。超不定期更新です。

『六法推理』 五十嵐律人

内容(amazonより引用)

現役弁護士作家が放つ、青春リーガル・ミステリ!

キャンパスの片隅で無料の法律相談所を開いている古城のもとに、経済学部の戸賀がやって来た。下宿先の怪現象に悩んでおりその正体を探ってほしいと言う。古城は事故物件の規制を踏まえて推理するが、戸賀と現場で話すうち、意外な犯人に辿り着く――。リベンジポルノ、毒親問題、カンニング騒動など学生を悩ます事件はおまかせあれ。法律マシーン・古城と、自称助手・戸賀のコンビが事件に挑む。爽やかな青春リーガル・ミステリ!

 

 

 

感想(ネタバレなし)

法律と本格ミステリという、あまり類を見ない組み合わせだが、そこは現役弁護士である著者、法のロジックをうまくミステリに落とし込んでいる。

表題作は事故物件という題材もさることながら、動機が法律に結び付くのが見事。

最近の世相を積極的に取り入れているのも注目すべき点。
デジタルタトゥーや毒親などの言葉が頻繁に出てきて新鮮だ。

どれも良編揃いだが、一つ取り立てるとすれば「親子不知」か。
物語の裏で起きていた出来事が続々と明かされ、何度も驚かされた。
真相の蓋然性こそ低いものの、ラストのなんとも言えぬ後味の悪さも含めて、完成度の高い一編。

また、いくつかの事件を通して探偵が成長していく、青春ストーリーとしても優れている。
「安楽椅子弁護」の秀逸なタイトルが古城に向ける試練に対し、それを乗り越える「卒業事変」を最後に持ってくるという構成が素晴らしい。
扱っている問題と真剣に向き合いながらも、読後感が爽やかで良かった。

メフィスト賞出身とは思えぬ優等生っぷりがこの一作だけでよく分かったので、他作も読まねば

 

評価:8点

2024/11/12 読了