『カミサマはそういない』 深緑野分
内容(amazonより引用)
変な予感がするんだ。
扉の向こうで、何か恐ろしいものが、僕を待っている気がして――。目を覚ましたら、なぜか無人の遊園地にいた。園内には僕をいじめた奴の死体が転がっている。ここは死後の世界なのだろうか? そこへナイフを持ったピエロが現れ……(「潮風吹いて、ゴンドラ揺れる」)
僕らはこの見張り塔から敵を撃つ。戦争が終わるまで。しかし、人員は減らされ、任務は過酷なものになっていく。そしてある日、味方の民間人への狙撃命令が下され……(「見張り塔」)
など全7編を収録。
感想(ネタバレなし)
触れ込み通り、多種多様なジャンルで、後ろ暗い物語を展開するオムニバスの短編集。
その作風とキレ味から、個人的には乙一の『ZOO』を連想した。
読者にスリルを与える筆運びが巧く、「潮風吹いて、ゴンドラ揺れる」は読んでいてゾクゾクした。
廃遊園地で殺人ピエロに追いかけられるだけで死んでも御免なシチュエーションなのに、さらに底へと落ちていくようなラストがもう最悪。
だが、短編小説として見れば無駄がなく、洗練されている。
オチの見事さで言えば「饑奇譚」が一番だった。
暗く閉ざされた世界に年に一度だけ人が焼け死ぬほどの光が太陽から射す。
複雑怪奇な異界を作り込みつつ、冒頭と対比した寓話性の高い末路に刺される。
希望に飢えに飢えたころ合いに差し出される最後の一篇がまた素晴らしい。
世界が海に沈み、人々が眠りに就こうとする中で、ささやかな反抗のように音楽が鳴る。
作者の信じる者が最後の最後に垣間見えるようで、道中の気の重さと裏腹に、良い気分で本を閉じることができた。
評価:7点
2024/9/30 読了
