立ち向かう振りの妄想癖

読んだ本の感想を雑に放ります(ミステリ多め)。超不定期更新です。

『方舟』 夕木春央

内容(amazonより引用)

9人のうち、死んでもいいのは、ーー死ぬべきなのは誰か?

大学時代の友達と従兄と一緒に山奥の地下建築を訪れた柊一は、偶然出会った三人家族とともに地下建築の中で夜を越すことになった。
翌日の明け方、地震が発生し、扉が岩でふさがれた。さらに地盤に異変が起き、水が流入しはじめた。いずれ地下建築は水没する。
そんな矢先に殺人が起こった。
だれか一人を犠牲にすれば脱出できる。生贄には、その犯人がなるべきだ。ーー犯人以外の全員が、そう思った。

イムリミットまでおよそ1週間。それまでに、僕らは殺人犯を見つけなければならない。

 

 

感想(ネタバレなし)

※以下はネタバレ箇所を隠した感想です※

個人的にはオールタイムベスト級である『いけにえ』と2023年の各賞でしのぎを削り、その噂もアンテナを張るまでもなく耳に入っていた本作。
意を決して読んでみれば……なるほど、これはミステリ史に名を残すのも、巷で話題になるのも納得の傑作だ。

プロットとしては極めて王道のクローズド・サークルもの。
閉鎖空間で起こる殺人事件の犯人を突き止めると書けば、世にいくらでもあるミステリだろう。

特異なのは、あらすじにあるような状況のみであり、その一点がもたらす威力が凄まじい。
明かされた真実に、呆然としてしまった。

とにかくその手口が鮮やかすぎて、よく煽られる”トラウマ!”というよりは、むしろ感動を覚えた。
いやほんと、すごいよこれ。

 

評価:10点

2024/9/15 読了

 

以下、ネタバレ箇所を含めた感想

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

感想(ネタバレあり)

個人的にはオールタイムベスト級である『いけにえ』と2023年の各賞でしのぎを削り、その噂もアンテナを張るまでもなく耳に入っていた本作。
意を決して読んでみれば……なるほど、これはミステリ史に名を残すのも、巷で話題になるのも納得の傑作だ。

プロットとしては極めて王道のクローズド・サークルもの。
閉鎖空間で起こる殺人事件の犯人を突き止めると書けば、世にいくらでもあるミステリだろう。

特異なのは、あらすじにあるような状況のみであり、その一点がもたらす威力が凄まじい。
エピローグで明かされた真実に、呆然としてしまった。
完全に構図が逆じゃないか……!

他の全員が普通のルールだと思ってババ抜きしてる中、一人だけババを引いた方が勝ちだと知っているようなものか。
出口の真相に気づき、速攻であのプランを立てて行動できるのも、可能性の芽を一つ残さず潰す徹底っぷりも凄まじい。
もう完全に犯人が上手。ここまで探偵役が完全敗北するミステリは類を見ないのでは。

とにかくその手口が鮮やかすぎて、よく煽られる”トラウマ!”というよりは、むしろ感動を覚えた。
いやほんと、すごいよこれ。

 

下線部がネタバレ箇所です