内容(amazonより引用)
やがて世界に名を馳せることとなる作家、安部公房。
その思想の萌芽を鮮烈に伝える初期短編集。太平洋戦争末期、満州で激動の日々を過ごした青年は、その時何を思い、何を未来に残したのか――。漂泊民の少年が定住を切望する19歳の処女作「(霊媒の話より)題未定」、2012年新たに原稿が発見された、全集未収録の「天使」、「壁―S・カルマ氏の犯罪」に繫がる「キンドル氏とねこ」ほか。その揺籃にふさわしい清新な思想を示す初期短編11編。
感想(ネタバレなし)
奇才阿部公房の初期短編集という事で、まぁ難しいしよく分かんない。
……だが、それでも読めてしまうのは、野心的な書き口と、ドライでカッコいい文体の賜物だと思う。
表題作は構成が面白い。
先に終盤のワンカットを見せて、次にそこへ至るまでの道筋を子細に明かす、作中で言及された”手品と種明かしを同時に行う”手法が目を引く。
更にちょいちょいメタっぽい語りが入り、詩をはさむときにも「伝わるか分からんけど、ここで詩を入れるぞ」みたいに書いてあって、クスッとしてしまう。
なんとなくだが、創作に対する苦悩と賛美をテーマとした作品が多いように見える。
「第一の手紙~第四の手紙」も「悪魔ドゥベモオ」も、何かを創ることで後戻りできなくなってしまった人間が、それでも創作に宿る蠱惑的な美に魅入られる様子が、これまたクールな文体で書かれていて、読み応えがあった。
かなりクセはあるが、好きかも……阿部公房。
評価:なし(文学作品のため)
2024/9/12