立ち向かう振りの妄想癖

読んだ本の感想を雑に放ります(ミステリ多め)。超不定期更新です。

『万葉と沙羅』 中江有里

内容(amazonより引用)

実は、まわり道は一番近いのだ。

傑作青春小説がついに文庫化!

中学で友人関係に苦しみ不登校だった沙羅が選んだのは通信制高校
そこで再会した幼なじみの万葉は、古本屋でアルバイトする青年。
「本という宝を探すにはコツがいる」と彼に教えられるうちに、
沙羅も読書の奥深さに目覚めていって――。

新美南吉宮沢賢治松本清張、マリー・ホール・エッツ……小説や絵本など、実際の著名な25冊の本が登場!
大切な人と本でつながる瑞々しい青春小説。

 

 

感想(ネタバレなし)

ガールミーツボーイというものは、ほぼ万人が好きと言えるストーリーではないだろうか?
孤独を抱えた少女が、幼馴染と再会して別の世界を知り、日々が変わっていく。
王道とも言える華やかな物語を、この作品は題材を小説、舞台を通信制の学校にすることにより、静かで現実的なものとして描いている。

万葉と沙羅が小説の感想を共有するという形で、いくつかの作品の名前が作中で挙げられるが、印象深かったのが伊藤計劃の『ハーモニー』。
キャラクターに自分たちを準えつつ、作品外の部分にも意味を持たせていて、ズシリと胸に残るものがあった。
未読なので読まねば。

『ハーモニー』が出てくる話の終わり方も良かった。
”好き”と偏に言っても意味は無数にあって、それを一つに決めず、そのままで大切にしておくような在り方は、自由で好きだ。

万葉と沙羅の関係も、分かりやすい落としどころを付けないことにより、素のままの機微を映し出している。
それ故にやや物足りない気持ちもあるが、良い青春小説だったと思う。

 

評価:7点

2024/8/28 読了