立ち向かう振りの妄想癖

読んだ本の感想を雑に放ります(ミステリ多め)。超不定期更新です。

『夢伝い』 宇佐美まこと

内容(amazonより引用)

孤独を愛する人気作家が突然の断筆宣言。担当編集者は作家の住む地方へひとり、向かった。作家を脅かすものを探しに――(「夢伝い」)。地球に近づいてきた惑星、現れた女遍路――。四国に戻って来た私は、40年前の午後を思い出していた(「送り遍路」)。自らの胎内で卵を孵すセグロウミヘビ。海洋生物マニアの男は「彼女」を手に入れてから生活が一変し……(「卵胎生」)。未知のウイルス性感染症が蔓延した後、「新しい世界」の幕が開けた。男は都心から自然豊かな土地に移住を決め、恋人とはリモートで関係を深めていたが……(「果て無き世界の果て」)など、昭和から現代までを舞台に、日常に潜む怪異や心理の歪みから生まれる怪奇を描いた全11話を収録。

 

 

感想(ネタバレなし)

※以下はネタバレ箇所を隠した感想です※

よくぞここまでと感心するほど引き出しが多く、かつ企みに満ちた怪談集。
なにぶん想像力に乏しい人間なので本気で怖いと思うことこそなかったものの、一話につき必ず一つは目を見張るような展開があり、ホラーとして極めて良質だ。

怖さで言えば、「送り遍路」が一番ゾクッとした。
過去と現在の構図が一瞬にして崩れ、幻想的なラストへと向かう。
その筆運びが美しすぎて、怖さよりかは寧ろ感動の方が優位なのだが、まぁそれはやむなし。

「愛と見分けがつかない」も構成が美しい一篇。
謎めいた導入から、全てが秀逸なタイトルに収斂されていくのが見事。

昭和を舞台とした話も多い中で、一際異彩を放つのが「果てなき世界の果て」。
コロナという言葉が登場する時点で怪奇っぽくないうえ、題材が○○である。
普通なら場違いになるであろうところを、ギミックや心理描写の深さによりここまで溶け込ませているのは流石の一言しかない。

ホラーとしてもミステリとしても一級品で、作家としての実力を再確認する短編集だった。

 

評価:8点

2024/8/24 読了

 

以下、ネタバレ箇所を含めた感想

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

感想(ネタバレあり)

よくぞここまでと感心するほど引き出しが多く、かつ企みに満ちた怪談集。
なにぶん想像力に乏しい人間なので本気で怖いと思うことこそなかったものの、一話につき必ず一つは目を見張るような展開があり、ホラーとして極めて良質だ。

怖さで言えば、「送り遍路」が一番ゾクッとした。
過去と現在の構図が一瞬にして崩れ、幻想的なラストへと向かう。
その筆運びが美しすぎて、怖さよりかは寧ろ感動の方が優位なのだが、まぁそれはやむなし。

「愛と見分けがつかない」も構成が美しい一篇。
謎めいた導入から、全てが秀逸なタイトルに収斂されていくのが見事。

昭和を舞台とした話も多い中で、一際異彩を放つのが「果てなき世界の果て」。
コロナという言葉が登場する時点で怪奇っぽくないうえ、題材がAIによるゲームアプリである。
普通なら場違いになるであろうところを、ギミックや心理描写の深さによりここまで溶け込ませているのは流石の一言しかない。

ホラーとしてもミステリとしても一級品で、作家としての実力を再確認する短編集だった。

 

下線部がネタバレ箇所です