立ち向かう振りの妄想癖

読んだ本の感想を雑に放ります(ミステリ多め)。超不定期更新です。

『夏への扉』 ロバート・A・ハインライン

内容(amazonより引用)

ぼくの飼い猫のピートは、冬になるときまって「夏への扉」を探しはじめる。家にあるドアのどれかひとつが、夏に通じていると固く信じているのだ。そして1970年12月、ぼくもまた「夏への扉」を探していた。親友と恋人に裏切られ、技術者の命である発明までだましとられてしまったからだ。さらに、冷凍睡眠で30年後の2000年へと送りこまれたぼくは、失ったものを取り戻すことができるのか──新版でおくる、永遠の名作。解説/高橋良平

 

 

感想(ネタバレなし)

もはや古典の域に達するであろうSF小説の本作だが、今読んでも余裕で楽しめるからすごい。

プロットは非常にシンプルだし、(個人的に苦手な)SF小説特有の専門用語も必要最低限に収まっている。
複雑な要素を切り詰め、空いたスペースに純然たる冒険活劇としての魅力を詰め込んだことが、『夏への扉』が本邦でこれまでの人気を獲得した理由だと思う。
冷凍睡眠で30年後の世界に迷い込んだ主人公が、壮大なスケールでてんやわんやするストーリーに感じるのは、少年期に劇場版ドラえもんをスクリーンの前で見た時の高揚そのものだ。

後半の畳みかけるような展開も素晴らしい。
撒いた伏線をしっかりと回収した上で描かれる結末の爽快感は、時間SFでしか味わえないカタルシスに満ちていた。
タイトルに込められた意図も、著者の信念が覗ける印象深いもので、素敵だ。

今読んでも色褪せない名作でした。
猫好きは絶対読んでね!

 

評価:8点

2024/8/18 読了