立ち向かう振りの妄想癖

読んだ本の感想を雑に放ります(ミステリ多め)。超不定期更新です。

『千年ジュリエット』 初野晴

内容(amazonより引用)

文化祭の季節がやってきた! 吹奏楽部の元気少女チカと、残念系美少年のハルタも準備に忙しい毎日。そんな中、変わった風貌の美女が高校に現れる。しかも、ハルタとチカの憧れの先生と何やら親しげで……。

 

 

感想(ネタバレなし)

大傑作だった前作、「空想オルガン」を経て、シリーズとして一段高みへと上がったことを感じさせる、充実した短編集。

相も変わらずギャグがキレッキレで、電車内で読むのが惜しいほどに笑える。
今回初出のブラックリスト十傑メンバーである甲田さんが特にいい味を出していた。
真面目なハードロッカーとか一番好きなヤツですよ。

そんな彼が主役の話は、”文化祭の出番目前で、何故かタクシーに乗ったまま法定速度で街をうろつく”という奇行の意図を探るプロットが面白い。
読了後、タイトルにニヤリ。

「エデンの谷」「決闘戯曲」はミステリとしては小粒だが、キャラ同士のアンサンブルが楽しいし、情念の刻まれた真相が胸に残る。

そして「千年ジュリエット」。何と言ってもこれである。
謎めいた導入から、一つの世界を作り、それを主人公たちの舞台までつなげる手腕が見事だし、ミステリ的なサプライズも決まってもう言う事なし。
残された者の決意を、厳しくもあたたかな筆致で描いた、シリーズ中1、2を争う名編だった。

やっぱハルチカはいいなぁ......。

 

評価:8点

2024/8/2 読了