内容(amazonより引用)
前代未聞の筋トレ小説、誕生!
「別の生き物になりたい」。
筋トレに励む会社員・U野は、Gジムで自己流のトレーニングをしていたところ、
O島からボディ・ビル大会への出場を勧められ、
本格的な筋トレと食事管理を始める。しかし、大会で結果を残すためには
筋肉のみならず「女らしさ」も鍛えなければならなかった――。鍛錬の甲斐あって身体は仕上がっていくが、
職場では彼氏ができてダイエットをしていると思われ、
母からは「ムキムキにならないでよ」と心無い言葉をかけられる。
モヤモヤした思いを解消できないまま迎えた大会当日。
彼女が決勝の舞台で取った行動とは?
世の常識に疑問を投げかける圧巻のデビュー作。
感想(ネタバレなし)
※以下はネタバレ箇所を隠した感想です※
筋トレ小説であるとか、「女らしさ」を強いる社会への風刺であるとか、色々言われているが、そういった色眼鏡抜きに文章が堪らなくおもしろい。
冷静な文体から発せられる、肩の力が抜けたユーモアが冴えていて、1ページに1回くらいのペースで笑ってしまう。
その笑いは勿論主人公への嘲笑などではなく、かといって誰かを馬鹿にする攻撃的なものでもない。
ワードセンスの良さであるとか、感覚のズレなど、観察眼の鋭さに由来する、上品な笑いなのである。
そこにU野のストイックすぎる姿勢が重なり、ハードボイルド小説の趣きさえ感じられる。
一方で、「女性らしさ」を求める社会のリアリティの高さも見逃せない点だ。
現実社会では、SNS上でよく見るあからさまな差別は少ない。
もっと希薄な、大気におけるアルゴン程の割合で、やんわりとあるものだと思う。
その掴みどころのない存在を、ボディビルという題材により顕在化させた上で放たれる「○○」の一言は痛快だった。
今日もどこかで、群れを抜けた人間の背中を、友であるスミスが支えていることだろう。
評価:8点
2024/7/7 読了
補足:カテゴリーとしては文学作品にあたりますが、大衆小説としても読めると判断したため、点数を付けました。
以下、ネタバレ箇所を含めた感想
感想(ネタバレあり)
筋トレ小説であるとか、「女らしさ」を強いる社会への風刺であるとか、色々言われているが、そういった色眼鏡抜きに文章が堪らなくおもしろい。
冷静な文体から発せられる、肩の力が抜けたユーモアが冴えていて、1ページに1回くらいのペースで笑ってしまう。
その笑いは勿論主人公への嘲笑などではなく、かといって誰かを馬鹿にする攻撃的なものでもない。
ワードセンスの良さであるとか、感覚のズレなど、観察眼の鋭さに由来する、上品な笑いなのである。
そこにU野のストイックすぎる姿勢が重なり、ハードボイルド小説の趣きさえ感じられる。
一方で、「女性らしさ」を求める社会のリアリティの高さも見逃せない点だ。
現実社会では、SNS上でよく見るあからさまな差別は少ない。
もっと希薄な、大気におけるアルゴン程の割合で、やんわりとあるものだと思う。
その掴みどころのない存在を、ボディビルという題材により顕在化させた上で放たれる「筋肉とは関係ないですよね?」の一言は痛快だった。
今日もどこかで、群れを抜けた人間の背中を、友であるスミスが支えていることだろう。
下線部がネタバレ箇所です