内容(amazonより引用)
成長著しいIT企業「スピラリンクス」が初めて行う新卒採用。最終選考に残った六人の就活生に与えられた課題は、一カ月後までにチームを作り上げ、ディスカッションをするというものだった。全員で内定を得るため、波多野祥吾は五人の学生と交流を深めていくが、本番直前に課題の変更が通達される。それは、「六人の中から一人の内定者を決める」こと。仲間だったはずの六人は、ひとつの席を奪い合うライバルになった。内定を賭けた議論が進む中、六通の封筒が発見される。個人名が書かれた封筒を空けると「●●は人殺し」だという告発文が入っていた。彼ら六人の嘘と罪とは。そして「犯人」の目的とは――。
感想(ネタバレなし)
方々で賛辞の声を聞き、上りに上がったハードルを優に超えてきた大傑作。
就活という、ある種の異常な空間を舞台としたストーリーテリングがべらぼうに巧く、どんな裏があるのかと予想しながら読むの非常に楽しかった。
例の封筒が登場してから心理戦は加速し、目まぐるしく大局が変わり続け、息もつかせない。
溜め息をつきたくなる程の鮮やかさで議論は幕を閉じるのだが、驚くべきことにその完璧としか思えない帰結を迎えるのはページ数で半分ほどの時点なのだ。
これだけの心理戦を描ける作者なのだから、残りが消化試合なんてことは勿論ない。
隠されていた仕掛けの数々が連鎖的に炸裂し、物語が本当の姿を現す。
それは就活なんていう下らない限定的なものではなくて、人が人を知るというのは如何なることかを暴き出す、普遍的な価値を持っている。
小説としてのテーマを、ミステリの技巧で描き切った新たな名作であり、全就活生に勧めたくなる一冊だった。
評価:10点
2024/6/9 読了