内容(amazonより引用)
近いうちにこの切っ先が、私の手の内で何人かの血を吸うであろう……。
Q大附属病院に入院をしていた「私」は、レントゲン室に勤務する異母弟から余命宣告をされる。
理不尽な運命を豪快に笑い飛ばした「私」だったが、生命が尽きるまでに成し遂げなければならない使命があった。
「私」は背広の内ポケットに家伝の短刀を忍ばせると、恐ろしい復讐の旅に出るのであった。
感想(ネタバレなし)
夢野久作といえば、語り草となっている彼の『ドグラ・マグラ』の作者、くらいの知識しかなかったが、この度読んでみた。
まず文章はそこまで読みづらくなく、ドグマグの悪評......もとい噂を散々聞かされていた身としてはやや拍子抜け。
いや、勿論いいことですよ!
カテゴリーとしては変格推理小説というものに属するらしく、ミステリ特有の猟奇と狂気が醸す雰囲気が実によかった。
その雰囲気が色濃く漂っているのが「狂人は笑う」。
病室で患者が一方的に語るというシチュエーションの時点で背中に怖気が感じられそうだが、その上、霧に覆われるかのように何が真実か分からなくなるストーリー展開も素晴らしかった。
表題作は遺稿らしく、色々無理な部分も見えるが、少ない文量の中で何度もどんでん返しがあって面白かった。
総じて結構楽しめたので、『ドグラ・マグラ』も読めるんじゃと淡い期待を抱いたが、おそらく打ち砕かれるだろう。
評価:6点
2024/5/19 読了